2001 Fiscal Year Annual Research Report
ラット頭部Whiplash Shakingモデルにおける脳脊髄損傷に関する研究
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13670436
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
向井 敏二 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (20200230)
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Keywords | shaken baby syndrome / 実験動物モデル / 脳損傷 / 児童虐待 |
Research Abstract |
1.頭部震盪モデル作製 6日齢SDラット(平均体重13.8g、震盪群n=5)を麻酔下で震盪機に取り付け、頭部に小型加速度計を設置した上で10分間震盪した。頭部には前後方向の鞭打ち運動(毎分約180回)が観測され、その際の加速度は約10Gと測定された。これを連続3日間負荷し、3週間後に屠殺し震盪群とした。麻酔覚醒後の両群動物に行動上の有意差は認められなかった。 2.頭部震盪の動脈血ガス等に対する影響 8週齢の雄性SDラット(n=5)を用い、あらかじめ動脈内に留置したカテーテルより震盪前と震盪直後の動脈血を採取し、各種ガス分析を行った。その結果、pH、pO_2、sO_2の各測定平均値が震盪前では7.38、122.9、97.1であるのに対し、震盪直後は7.35、106.8、95.3といずれも有意(P<0.05)に低下した。この変化は5分後にほぼ震盪前の値に回復した。 3.体重および脳重量の変化 震盪後3週間における震盪群/対象群の平均増加体重を比較したところ、震盪群63.8g、対象群66.0gであり両群間に統計的有意差(P<0.05)が認められた。一方、摘出した全脳の平均重量を比較したところ、震盪群1.66g、対象群1.71gであり両群間に統計的有意差(Pく0.05)が認められた。 4.病理組織学的検討 摘出脳の凍結切片(20μ)を作製し、HE染色および鉄染色を施し病理学的に検討した。その結果、震盪群・対象群ともにクモ膜下および実質内には出血の痕跡はなく、またグリア細胞の増殖も明らかでなかった。 [考察]本頭部震盪モデルの加速度は約10Gであり、脳への負荷としては充分と考えられたが、ヒトの急性期にみられる高度脳損傷は再現されなかった。しかし受傷後3週間での脳重量低下は有意であることから、何等かの病理学的異常が内在する可能性は高い。今後さらに免疫組織学的技法を加え、病理学的所見の検討を予定している。
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