2002 Fiscal Year Annual Research Report
心臓の虚血・再潅流障害に対する可溶性Fas遺伝子治療の試み-最近開発されたガットレスADVベクターを用いた検討-
Project/Area Number |
13670699
|
Research Institution | GIFU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
湊口 信也 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (20190697)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 久義 岐阜大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80115930)
小戝 健一郎 岐阜大学, 医学部, 助教授 (90258418)
|
Keywords | 遺伝子治療 / 心筋梗塞 / 心室リモデリング / 心不全 / Fas / Fasリガンドシステム |
Research Abstract |
左冠動脈永久結紮によるマウス心筋梗塞モデルにおいて、梗塞3日目にマウス可溶性Fas抗原遺伝子を組み込んだアデノウィルスベクター(Ad. CAG-sFas)による遺伝子治療により、心筋梗塞慢性期(梗塞4週後)の心不全が軽減し、左室リモデリングが改善されることを昨年度明らかにした。 今年度はこの効果の機序を明らかにすることに重点を置き検討を加えた。梗塞10日後(遺伝子治療7日後)の梗塞亜急性期の組織学的検討により、梗塞巣の肉芽組織細胞にFasならびにFasリガンドが強発現していた。sFas治療群では、コントロール群(LacZ)に比し梗塞巣肉芽組織細胞のアポトーシスが有意に抑制されていた。梗塞4週後では、コントロール群のひ薄化し瘢痕化した梗塞壁に比しsFas群では細胞密度の高い壁厚の増大した梗塞壁がみられた。この梗塞壁の細胞成分は主に血管、筋線維芽細胞であった。慢性期の梗塞巣を電子顕微鏡下に検討すると、細胞質に筋原細線維が充満した収縮型の平滑筋細胞の束状の集合がみられ、これらは梗塞周囲の残存心筋と平行に走行していた。 Laplaceの法則によると左室壁ストレスは壁厚が薄いほど大となるので、左室腔の拡大に向かう。したがって、sFas治療により肉芽組織細胞が温存され梗塞壁厚が大となったことが、心拡大の悪化を防ぐ一因となっている可能性が示唆されたかつ、収縮型フェノタイプの平滑筋細胞は収縮力を有しかつ残存心筋細胞と平行であるので心収縮力の一助になつている可能性がある。これらが心筋梗塞後のsFas遺伝子治療が梗塞後のリモテリングならびに心不全を軽減した要因と推察された。
|