2001 Fiscal Year Annual Research Report
リゾフォスファチジルコリンの細胞内カルシウム上昇と活性酸素種に関する研究
Project/Area Number |
13670732
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
石橋 敏幸 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00223024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 幸夫 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90004712)
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Keywords | 血管内皮細胞 / カルシウム / Rho / リゾフォスファチジルコリン / ゲラニルゲラニル化 / HMG-CoA還元酵素阻害薬 |
Research Abstract |
本課題は、血管内皮細胞機能不全を引き起こす酸化LDLのリン脂質成分lysophosphatidylcholine(LPC)のシグナル伝達系をCa^<2+>動態と活性酸素種を中心に解明することを目的としている。本年度は、LPCを培養ヒト大動脈血管内皮細胞に添加した系を用いて実験を進め(目的1、2および実施計画1、2)、下記のような成果を得た。 LPCにより細胞内Ca^<2+>ストアからの動員と細胞膜からの流入が刺激され、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が認められた。そして、細胞内Ca^<2+>動員はphospholipase Cを介し、細胞膜流入電流は非選択的カチオン電流であることがわかり、両者とも低分子GTP結合蛋白質Rhoの阻害により著明に抑制された。特筆すべき新しい知見として、LPC刺激により極めて迅速に(1分以内)Rhoの活性化が起こり、この活性化には従来言われているGTP/GDP変換のステップよりゲラニルゲラニル化がより重要であることが判明した。このことは、低分子GTP結合蛋白質の活性化において新しいメカニズムと思われる。さらに、Rho活性化が細胞内Ca^<2+>動員と密接に関連し、LPC誘導Ca^<2+>動員がRhoキナーゼ阻害薬でも抑制されたことより、この系ではRhoのeffectorはRhoキナーゼと考えられる。また、蛋白質の脂質修飾であるイソプレニル化を阻害するHMG-CoA還元酵素阻害薬は、LPCによるRhoの迅速な活性化を阻止し血管内皮細胞内Ca^<2+>濃度上昇を抑制した。我々のデータは、この薬剤が内皮細胞機能不全の治療に有用であることを支持する結果と思われる。以上の結果は、2001年10月9日にCirculationに投稿し12月21日にアクセプトされ、2002年2月26日号のCirculationに掲載された(Yokoyama K, Ishibashi T et al. Circulation 2002;105:962-967)。今後、LPC刺激によるRho活性化、Ca^<2+>シグナル、生物学的活性、これらの三者の関係をさらに明確にしていきたい。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yokoyama K: "HMG-CoA reductase inhibitors suppress intracellular calcium mobilization and membrane current induced by lysophosphatidylcholine in endothelial cells"Circulation. 105. 962-967 (2002)
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[Publications] Nagata K: "Rho/Rho-kinase is involved in the synthesis of tissue factor in human monocytes"Atherosclerosis. (in press).
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[Publications] 石橋敏幸: "動脈硬化の発症と凝固・線溶系異常"薬理と治療. 29. 719-723 (2001)
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[Publications] 石橋敏幸: "抗凝固・血栓作用を介するプラーク安定化作用"血管医学. 2・4. 607-613 (2001)