2002 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん防御機構における海馬顆粒細胞新生の役割に関する実験的研究
Project/Area Number |
13670847
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
丸 栄一 日本医科大学, 医学部, 助教授 (80221597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山形 要人 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所・神経薬理, 副参事研究員 (20263262)
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Keywords | 海馬歯状回 / 顆粒細胞 / 神経細胞新生 / BrdU標識法 / てんかん発作 / 扁桃核キンドリング / 細胞接着因子arcadlin / ノックアウト・マウス |
Research Abstract |
本研究の予備実験において、細胞接着分子arcadlinの遺伝子欠損マウスでは海馬顆粒細胞の新生がほとんど認められないという結果を得た。本実験では、この結果を基に、arcadlin遺伝子欠損マウスにおける扁桃核キンドリングの進展過程を検討し、海馬顆粒細胞の新生がてんかん防御機構として働いている可能性を明らかにした。 1.Arcadlin遺伝子欠損マウス(arcd[-/-])における海馬顆粒細胞の新生:BrdU標識法を用いて、arcd[+/+]マウスとarcd[-/-]マウスにおける海馬顆粒細胞の新生率を検討した。被験体は平均34週令であった。Arcd[+/+]マウスの背側海馬歯状回では、プレグマ点より後方2.0mm近傍の冠状切片当たり6〜10個のBrdU陽性顆粒細胞、すなわち新生顆粒細胞が認められた。しかし、arcd[-/-]マウスの海馬歯状回ではBrdU陽性顆粒細胞がほとんど認められなかった。 2.Arcadlin遺伝子欠損マウス(arcd[-/-])における扁桃核キンドリング:Arcd[+/+]およびarcd[-/-]マウスを用いて、1日1回、28日間にわたり扇桃核にキンドリング刺激を与えて後発射を誘発した。キンドリング刺激は100Hz、1秒間のパルス刺激で、刺激強度は発作誘発閾値+100μAとした。その結果、arcd[-/-]マウスのほうがarcd[+/+]マウスよりも有意に速い後発射持続時間の進展過程を示した。また、全身けいれんの誘発に要するキンドリング刺激回数もarcd[-/-]マウスの方が有意に少なかった。 以上のように、顆粒細胞の新生していないarcd[-/-]マウスの方が、arcd[+/+]マウスよりも速いてんかん焦点形成を示すことから、海馬顆粒細胞の新生はキンドリングてんかん焦点形成に対して抑制的な役割を果たしているものと推測される。
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[Publications] Eiichi Maru: "Functional and morphological changes in the hippocampal neuronal circuits associated with epileptic seizres"Epilepsia. 43(S9). 44-49 (2002)
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[Publications] 山形 要人: "痙攣発作によって誘導される遺伝子群の解析によるてんかん病態の解明"(財)てんかん治療研究振興財団研究年報. 14. 75-81 (2002)