2003 Fiscal Year Annual Research Report
放射線照射の及ぼすヒトがん細胞ミトコンドリア代謝への影響の解析
Project/Area Number |
13670961
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
古田 雅也 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (00261850)
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Keywords | ミトコンドリア / 放射線治療 / 温熱療法 / 亜致死障害 |
Research Abstract |
一般にがん細胞では,放射線照射により生じた細胞障害が修復することが知られている.そのひとつに亜致死性障害からの回復(sublethal damage repair, SLD repair)がある.SLD repairを阻害する要因として加温処理が知られている.平成15年度は.放射線照射後のSLD repairとミトコンドリア代謝の関連性を検討する目的で,照射直前または直後に温熱処理を行い,温熱療法の放射線照射後のミトコンドリア代謝に与える影響を検討した.細胞はヒト肺癌細胞A549を用い,温熱処理はそれ単独ではコロニーアッセイで明らかな抗腫瘍効果を生じない41℃で1時間加温とした.X線照射はコロニーアッセイで細胞生残率を25%に低下させる線量4.5Gyを0-6時間の間隔で2回照射した.4.5Gyを連続して照射(9Gy)すると細胞生残率は1.5%まで低下したが,1-6時間間隔で照射した群では3-5%しか低下せずSLD repairが生じ,その修復は2時間でほぼ完了したことが確認された.次に,照射前および照射後に温熱処理を加えると,0-6時間間隔て分割照射を行った場合の細胞生残率は1-3%と修復が遅延/阻害されたことが確認された.シアニン色素である3.3-dihexyloxacarbocyanine iodide (DiOC6(3))を用いて.フローサイトメトリにより照射後のがん細胞ミトコンドリア膜電位を測定すると,照射単独群では照射直後にミトコンドリア膜電位は,コントロールに比較して,104%と増大したのち,照射1-3時間後に93-96%と減少した.照射前に加温すると照射直後の膜電位のピークは照射0.5時間後に遅延し,照射直後に加温した場合でも,照射1時間後(すなわち加温直後)に膜電位は103%と増大した.以上,平成15年度の研究から,放射線照射による細胞障害からの修復に先立って,ミトコンドリア膜電位の一過性増大が生じること,また温熱療法により細胞障害の修復を阻害/遅延すると,膜電位の一過性増大も遷延して出現することが示された.
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Research Products
(1 results)