2001 Fiscal Year Annual Research Report
気分障害と精神分裂病の病態における脳情報伝達・神経可塑性障害の関与―ヒト脳神経発達と剪定を制御する遺伝子群の探索に関連して―
Project/Area Number |
13671023
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
小澤 寛樹 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (50260766)
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Keywords | 抗うつ薬 / 転写因子 / ヒト死後脳 / ヒト生後発達 / DNAチップ / 前頭葉 / 神経可塑性 |
Research Abstract |
本年度はヒト死後脳を用いて、脳情報伝達系と神経可塑性の検討する視点から、1)抗うつ薬関連遺伝子発現蛋白質の変化、2)ヒト生後発達期における遺伝子発現変化に関する研究を行った。 方法:1)うつ病の診断は同様にDSM-IIIR診断基準により行われ、また薬物摂取状況に関しては、死亡前に抗うつ薬の長期投与を受けていた3名、非投与群は2名であった。免疫組織学的検索にはAvidin FITC及びABC eliteを用いた。ADRG34(kf-1)に対するポリクローナル抗体はヒトのkf-1(79kDa)のアミノ酸配列中678-685残基(QPLSNDVPS)にあたるペプチドをラビットに免疫することにより作製された。2)19才例と39日生例、4ヶ月生例の前頭前野よりポリA-mRNA抽出し、DNAチップ(Takara)を用いて検索した。3)死後6時間以内の早期献体脳の脳室前角部より培養に供した(札幌医大倫理委員会の承認を得ている)。 結果、考察:1)抗うつ薬関連遺伝子kf-1(ADRG34)に対する抗体を用いて、脳内kf-1の分布について、免疫組織学的に検討したところ、錐体細胞内に免疫陽性であり、さらに、うつ病の抗うつ薬投与及び非投与例に双方においてKf-1陽性plaqueが認められた。またADにおいてもKf-1陽性Plaqueが認められたが、いわゆるアミロイドplaqueとの分布は異なっていた。kf-1のzinc finger構造を取る領域はC末端にあり、RING-H2 fingerモチーフと呼ばれる構造にも類似しており、これまでにこの構造を持つものがシナプス小胞や細胞膜の蛋白であることから、本研究結果はシナプス小胞や細胞膜蛋白としてsorting機構の変化とうつ病およびADの病態との関連性を推察された。2)ヒト発達期(0-4ヶ月)のヒト前頭葉皮質における遺伝子変化をDNAチップ(Takara)を用いて検索しところ、1152遺伝子の約5%前後の遺伝子が成人に比べ約2倍以上の変動を示し、詳細な解析を進めていく計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yamazuoto, M., Pohli, S., Durany, N., Ozawa, H et al.: "Increased level of calcium-sensitive adenylyl cyclase subtypes in the limbic system of alcoholics : evidence for a specific role of cAMP signaling in human addictive brain"Brain Res. 895. 233-237 (2001)
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[Publications] 千田 敏, 土岐 完, 小澤寛樹: "気分障害の病態におけるセカンドメッセンジャー系に対する細胞膜環境の関与"薬療基金年報. 33. 1-7 (2001)
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[Publications] Yamamoto, M., Gotz, E.M., Ozawa, H et al.: "Hippocampal level of neural specific adenylyl cyclase type I is decreased in Alzheimer's disease"Biochim. Biophys. Acta. 1535. 60-68 (2000)
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[Publications] Shichinohe, S., Ozawa, H.et al.: "Changes in the cAMP-related signal trans-duction mechanism in postmortem human brains of heroin addicts"J. Neural. Transm. 108. 335-347 (2001)
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[Publications] 土岐 完, 小澤寛樹, 齋藤利和: "死後脳を用いた気分障害の発症機序に関する情報伝達機能研究分子精神医学"分子精神医学. 1. 8-15 (2001)
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[Publications] 土岐 完, 小澤寛樹: "抗うつ薬はモノアミン仮説を越えられるか?"臨床精神薬理. 4. 205-212 (2001)
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[Publications] 小澤寛樹: "うつ病の薬理-脳科学研究の成果-(樋口輝彦編):脳情報伝達の視点から死後脳研究はなにを明らかにしたか?"東京,新興医学出版社. 22 (2001)