2001 Fiscal Year Annual Research Report
心理的および労働ストレスと酸化的DNA損傷による発癌リスク
Project/Area Number |
13671040
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
入江 正洋 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (00248593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 宏 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40152615)
小林 章雄 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80135342)
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Keywords | 心理的ストレス / ライフスタイル / 酸化的DNA損傷 / 8-Hydroxydeoxyguanosine / 癌 |
Research Abstract |
心理的ストレスと癌、特に発癌との関係の有無を明らかにするために、代表的な酸化的DNA損傷で発癌との深い関わりを有する8-Hydroxydeoxyguanosine(8-OH-dG)の末梢白血球DNA中生成量と、心理的および労働ストレスとの関係を、労働条件やライフスタイルなども含めて検討した。今年度は、癌の既往がない製造業関係の某企業労働者156名(男性116名,女性40名)を対象として、インフォームドコンセントを得たうえで、各種の病歴、年齢、性別、婚姻状態、職位、職務内容、粉塵への曝露の有無、自覚的な労働負荷量、平均一日労働時間、睡眠、喫煙、飲酒、運動、食事などのライフスタイル、過去1週間の抑うつ度を示すCenter for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)、過去数週間の全般的な精神的健康度を表すGeneral Health Questionnaire(GHQ)の60項目版、米国国立労働安全保健研究所(NIOSH)が編集したNIOSH版職業性ストレス調査票の中のストレス対処行動と社会的支援などからなる自記式質問紙調査を実施し、併せて平日の早朝空腹時に採血を行った。そして、白血球DNA中の8-OH-dG生成量をHPLC-ECD法によって定量した後、各質問事項と8-OH-dG値との関連性について検討を加えた。さらに、ストレスが好中球数を増加させ、好中球の活性酸素産生増加を介して白血球DNA中の8-OH-dG生成を促進する可能性を検討するために、白血球数や白血球分画と8-OH-dG値との関係についても調べた。その結果、女性では、8-OH-dG値はGHQの下位尺度の抑うつ度と正の相関があり、リンパ球数とは負の相関が認められた。一方、男性では、8-OH-dG値はCES-Dによる抑うつ度と有意な負の相関を示した。その他の項目と8-OH-dG値との間には有意な関連はなかった。以上の結果から、心理的ストレスと白血球DNA中の8-OH-dG値との関係には性差がみられ、好中球の8-OH-dG生成への明らかな関与は認められなかった。
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