2002 Fiscal Year Annual Research Report
心理的および労働ストレスと酸化的DNA損傷による発癌リスク
Project/Area Number |
13671040
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
入江 正洋 愛知医科大学, 医学部, 助教授 (00248593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 宏 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (40152615)
小林 章雄 愛知医科大学, 医学部, 教授 (80135342)
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Keywords | 心理的ストレス / 抑うつ / ライフスタイル / 酸化的DNA損傷 / 8-Hydroxydeoxyguanosine / 癌 |
Research Abstract |
抑うつと癌、特に発癌との関係の有無を明らかにするために、代表的な酸化的DNA損傷で発癌との深い関わりを有する8-Hydroxydeoxyguanosine(8-OH-dG)の末梢白血球DNA中生成量を指標として、うつ病患者と健常者における8-OH-dG値を比較し、様々な属性や生活習慣に関する要因も含めてうつ病が8-OH-dG値とどのように関連するのかを検討した。今年度は、うつ病患者ないしは抑うつ状態を呈する患者24名(男性17名、女性7名)と、うつ病患者と性別と年齢を適合させ1:2の割合で選出した健常対照者48名(男性34名、女性14名)を対象とした。これらの対象者に対して、Profile of Mood States(POMS)、Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(CES-D)、生活習慣などからなる自記式質間紙調査を実施し、末梢白血球DNA中の8-OH-dG生成量をHPLC-ECD法で測定した。そして、対照群と患者群について、CES-D得点、POMS得点、ならびに8-OH-dG値をt検定で比較するとともに、どのような要因が8-OH-dG値に関与しているのかを重回帰分析によって検討した。その結果、患者群の方が対照群に比べてCES-D得点、POMSの抑うつ-否認得点が有意に高く、逆にPOMSの活気得点が有意に低値であり、8-OH-dG値は、患者群の方が対照群より有意に高値を示した。これまでに8-OH-dG値との関連性が報告あるいは示唆されている年齢、BMI、性別、Breslowの7つの健康習慣実施数、P0MS-TMD得点、および対照群と患者群の別を説明変数、8-OH-dG値を目的変数とする重回帰分析を行ったところ、対照群と患者群の別のみが、8-OH-dG値に有意に寄与する変数として認められ、POMS-TMD得点の代わりにCES-D得点を用いた場合も、同様の結果であった。今回の検討により、うつ病患者で8-OH-dG生成量が増加していることが認められたため、抑うつ感情が発癌リスクとなりうる可能性が示唆された。
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