2001 Fiscal Year Annual Research Report
D-セリン脳内代謝機構の解明と精神分裂病治療への応用に関する研究
Project/Area Number |
13671043
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山本 直樹 国立精神・神経センター, 疾病研究第三部, 室長 (70312296)
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Keywords | 精神分裂病(分裂病) / D-セリン / NMDA受容体 / グルタミン酸 / 抗精神病薬 / コアゴニスト / 大脳皮質 / dsr-1 |
Research Abstract |
本研究は、NMDA型グルタミン酸受容体コアゴニストであるD-セリンが、精神分裂病の難治性症状を改善する効果があると推定されていることから、脳内在性D-セリンの代謝機構にかかわる調節因子群を明らかにして、それらを標的分子とした精神分裂病の新しい治療薬を開発することを目的としている。 本申請者は、differential cloning法の一つであるRNA arbitrarily primed PCR(RAP-PCR)法を用いて、D-セリンによってラット大脳皮質において発現が誘導される遺伝子転写産物を解析し、D-セリンの代謝および生理的機能に重要な役割を果たしていると考えられる分子の同定を行ってきた。cDNAクローニングの結果、D-セリン投与によって脳内で発現の上昇する2種類の転写産物を単離し、それぞれdsr-1(D-serine responsive transcript-1)およびdsr-2と名付けた。構造解析および組織分布の結果から、推測されるdsr-1遺伝子発現産物は、神経系でシナプス小胞膜などにおいてproton-ATPaseの他のサブユニットと相互作用する可能性、およびD-セリンの取り込みや放出を調節する役割を持つ可能性が考えられる。一方、dsr-2遺伝子産物は、中枢神経系にのみ発現しており、脳内局在としては、大脳皮質、海馬、線状体といった前脳部に多く存在する。すなわち、D-セリンの脳内分布に一致し、D-セリン分解系酵素であるD-amino acid oxidaseとは逆相関性の分布を示すことが明らかとなった。現在、dsr-1およびdsr-2の、ラットおよびヒトにおけるゲノム構造を解析中である。 このように本研究によってはじめて明らかとなったD-セリン応答遺伝子は、いずれも、その構造、組織分布ならびにD-セリンに対する選択的応答性などから、中枢神経系において神経シナプス小胞機能の調節や、D-セリンの代謝に関わる遺伝子であることが推測される。今後これらの遺伝子産物を中心としてD-セリンの代謝や作用に関わる分子機構を解明することにより精神分裂病の新規治療薬開発における標的候補分子が明らかとなると期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Tsuchida, H. et al.: "Cloning of a D-serine-regulared transcript dsr-1 from the rat cerebral cortex"Biochem Biophys Res Commun. 280. 1189-1196 (2001)
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[Publications] Yamamoto, N. et al.: "Uptake of D-serine by synaptosomal P2 fraction isolated from rat brain"Synapse. 42. 84-86 (2001)
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[Publications] Yamamoto, N. et al.: "Uptake and release of D-serine in rat brain synaptosome"Amino Acids. 21. 55-56 (2001)
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[Publications] Yamamoto, N. et al.: "Inhibition of thyroid hormone binding to the nuclear receptor by mobilization of free fatty acids"Horm Metab Res. 33. 131-137 (2001)
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[Publications] 山本直樹, 他: "新たな抗精神病薬開発の未来"Schizophrenia Frontier. 2. 99-106 (2001)