2002 Fiscal Year Annual Research Report
変異分子細胞内集積型モデルを用いた先天性アンチトロンビン欠乏症の分子病態解析
Project/Area Number |
13671054
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Research Institution | TOYAMA MEDICAL AND PHARMACEUTICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小澤 哲夫 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (80262525)
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Keywords | アンチトロンビン / プロテアソーム / 小胞体 / 血栓症 |
Research Abstract |
我々は野生型および各種変異アンチトロンビン(AT)遺伝子を安定発現するCHO細胞株を樹立し、変異AT分子の細胞内動態を詳細に解析した。この過程で、typeI(血中抗原量減少型)欠乏症をきたすATMorioka(Cys95Arg)の安定発現CHO細胞株では、変異AT分子(ATC95R)は細胞内分解を受けること無く、細胞内に形成された多数の特異な嚢胞状の構造物の内部に蓄積したまま長時間残留することを見いだした。パルス-チェイス法による解析では、野性型AT分子がラベル後3時間で約80%が液体培地中に分泌されるのに対してATC95R分子はほとんど細胞内分解を受けること無く、細胞内半減期約3日間で液体培地中に分泌されることが分かった(変異型ATの分泌速度は野性型の約1/50)。また、EndoH処理やBrefeldinA処理に対する反応性から、ATC95R分子はGolgi装置より上流で細胞内に集積することが判明した。さらに、免疫電顕による観察から変異AT分子を含む構造物を構成する膜は小胞体由来と考えられた。さらに解析を進めた結果、ATC95R分子は細胞内で分子間ダイマーを形成していること、アグリソームのような凝集体は形成していないことも明らかになった。以上の結果から、ATC95RにおけるAT欠乏症は変異分子の高度の細胞内集積(小胞体由来の膜からなる構造物内に集積)と細胞外分泌速度の著しい低下により生じることが分かった。このように、ATC95Rは変異蛋白が細胞内分解を全く受けない点で極めてユニークであり、小胞体-プロテアソーム系などのタンパク質の品質管理機構や小胞体ストレス応答機構を解明する上できわめて有用なモデルとなることが期待される。
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Research Products
(1 results)