2001 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞移植後の免疫学的再構築におけるインターフェロン-α/β産生細胞の役割
Project/Area Number |
13671062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門脇 則光 京都大学, 医学研究科, 助手 (60324620)
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Keywords | 同種造血幹細胞移植 / インターフェロン / 樹状細胞 / 自然免疫系 / 免疫不全 / 日和見感染症 / 移植片対宿主病(GVHD) / ステロイド |
Research Abstract |
インターフェロン-α/β産生細胞(interferon-α/β-producing cells ; IPC)は、ウイルスや細菌の刺激によってきわめて大量のIFN-α/βを産生し初期の感染防御に働く、自然免疫系の重要な構成細胞である。本研究では、同種造血幹細胞移植後のIPCおよび他の免疫担当細胞の回復過程と、おもな移植後合併症である急性GVHDや感染症の相関を検討し、同種移植後の免疫再構築におけるIPCの重要性を明らかにする。 京都大学医学部附属病院第内科において2000年4月から2001年2月の間に行われた同種造血幹細胞移植22例において、移植前、および移植後1年までの末梢血中IPC(lin-CD11c-CD4+), CD11c+DC(lin-CD11c+CD4+), 単球、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、B細胞、NK細胞の絶対数を経時的に検討した。II度以上の急性GVHDが発症しなかった症例では、IPCおよびCD11c+DC,単球、NK細胞といった自然免疫系に属する細胞は、移植後30日以内に速やかに移植前値近くまで回復したのに対し、ナイーブT細胞、B細胞といった獲得免疫系の細胞の回復は著しく遅延した。方、II度以上の急性GVHDが発症しプレドニゾロン換算30mg以上を投与した症例では、ステロイド投与中末梢血IPCの回復」が有意に抑制された。IPCの回復遅延と感染症発症の相関関係は、感染症に罹患した症例数が少ないこともあり、明らかではなかった。 IPCを含めた自然免疫系の再構築が移植後速やかに起こることは、免疫系が障害を受けた際に、初期の感染防御機構を速やかに確立するという生理的合目的性を反映していると推察される。また、GVHDの治療としてステロイドを投与することは、IPCの回復遅延を介して移植後の免疫不全を助長していると考えられる。今後、APCの回復を促進する方策が、移植後の感染防御に有用である可能性がある。
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