2001 Fiscal Year Annual Research Report
シスプラチン誘発急性腎不全における細胞周期調節因子p21の役割について
Project/Area Number |
13671106
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
菱田 明 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70111812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 明彦 浜松医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (60324357)
藤垣 嘉秀 浜松医科大学, 医学部, 助手 (20283351)
米村 克彦 浜松医科大学, 医学部・附属病院, 助教授 (40252176)
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Keywords | シスプラチン / 急性腎不全 / p21 / p53 / 細胞周期調節 / アポトーシス / DNA修復 / 急性腎不全に対する抵抗性獲得 |
Research Abstract |
急性腎不全時の尿細管障害における細胞周期調節の役割を検討するため、シスプラチン誘発急性腎不全モデルにおいてアポトーシス(TUNEL陽性細胞)、DNA修復(PCNA陽性細胞)、細胞増殖(BrdU陽性細胞)の指標と細胞周期調節関連物質としてのp21,p53の発現を検討した。急性腎不全はラットにシスプラチン5mg/kgを投与して惹起した。さらに腎機能がほぼ正常に回復した14日目に再度同量のシスプラチンを投与した。これにより血清クレアチニン値と組織障害の程度、TUNEL陽性細胞数が5日後にピークを迎える急性腎不全モデルが作成された。2回目のシスプラチン投与後の腎障害の程度は2回目に比し有意に軽度であった(シスプラチンに対する抵抗性獲得)。p21は3日目と9日目に2峰性に、p53は1日目に単独のピークを持って発現した。また、PCNA陽性細胞は3日目と12日目に、BrdU陽性細胞は7日目にピークを持って発現した。シスプラチン再投与後のp21、p53、PCNA陽性細胞の増加は1回目に比し早期に(2日目)ピークとなった。この際BrdU陽性細胞の増加は伴わなかった。シスプラチン投与後早期に見られたp21の増加が、p53とPCNA、TUNEL陽性細胞との増加の時期と一致し、BrdU陽性細胞数の増加の時期と一致しなかったことは、シスプラチンに暴露された尿細管細胞がG1/S期に細胞周期を停止させDNA修復を行おうとすること、修復不可能な細胞をアポトーシスに誘導することを示唆している。また、回復過程にp53の増加を伴わずに出現したp21の増加は回復過程にある尿細管細胞の増殖に関係することを示唆している。シスプラチンに対する抵抗性獲得がp21、p53及びPCNA陽性細胞の早期の増加を伴ったことは、シスプラチンに対する抵抗性獲得機序の一部が細胞修復の促進によると考えられる。以上の結果は、「シスプラチン誘発急性腎不全では細胞周期調節が腎機能障害の程度を決定する上で重要な役割を果たしている」ことを示唆している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Miyaji T, Kato A, Yasuda H, Fujigaki Y, Hishida A.: "Role of the increase in p21 in cisplatin-induced acute renal failure in rats"Journal of the American Society Nephrology. 12(5). 900-908 (2001)
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[Publications] Takahira R, Yonemura K, Fujise Y, Hishida A.: "Dexamethasone attenuates neutrophil infiltration in the rat kidney in ischemia/reperfusion injury : the possible role of nitroxyl"Free Radical Biology and Medicine. 31(6). 809-815 (2001)