Research Abstract |
腎不全における骨のPTHに対する抵抗性と無形成骨の発症機序を解明する目的で,動物モデルを試作し,検討した.10週齢SD系雄性ラットに,甲状腺副甲状腺摘除(TPTx)を施し,さらに1/2,3/4,5/6腎切除(Nx)またはsham手術を行い,rat PTH(1-34)を0.1μg/kg/hrで持続投与した.飼料はCa 2.0%, P1.0%を用い6週間飼育し,血清分析並びに骨形態計測を行った.TPTx-Nx群は,TPTx-sham群に比し,全て低回転骨に移行ており,類骨量,骨形成率の低下は腎機能低下の程度に依存していた.血清Ca, P,ビタミンD濃度に有意な差はなかった.この類骨量,骨形成率の低下は,週3回4週間のPTHの間歌投与によって用量依存性に改善した.したがって,腎不全で蓄積する何らかの物質が骨のPTHに対する抵抗性を惹起する可能性がある. 次に,PTHによって骨芽細胞に誘導されるRANKLが破骨細胞に作用するのを阻害するosteoprotegerin(OPG)の動態を,腎不全患者において検討した.血清OPG濃度はは,腎機能の低下とともに上昇し,残腎機能のない長期透析患者では正常の5倍に達していた.血液透析による除去はなされず,腎移植によって低下することから,腎臓がOPGのクリアランスに重要な臓器であることがわかった.この蓄積したOPGは試験管内でRANKLを結合する能力を保持していたので,骨組織との比較を行った.OPG濃度は,ES/BSと有意な負の相関関係をしめし,同等のPTHレベルでも,OPGが高い方が骨吸収は低下していた.したがって,腎不全においてはOPGが蓄積するために,破骨細胞の活性化が低下している.この異常は腎不全ではかならず存在するが,PTHがきわめて高い場合にはマスクされていたと考えられる.この他に,腎不全において1-84PTHの分解産物の7-84PTHが蓄積し,従来のintact PTH assayはPTH活性を過大評価していたことが明らかになった.
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