2002 Fiscal Year Annual Research Report
上皮増殖因子受容体を分子標的とした食道癌に対する遺伝子組換え新規抗癌剤の開発
Project/Area Number |
13671338
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小澤 壯治 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (10169287)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 信彦 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60317146)
|
Keywords | 新しい融合蛋白質 / 受容体 |
Research Abstract |
<背景>近年分子標的療法が提唱され、国内外で積極的に研究・推進されているが、なかでもVEGFやFGFなどの血管新生促進因子が標的分子として注目を集めている。我々は遺伝子融合によりbFGFをRNaseドメイン内部に挿入することで、立体構造的にRNase inhibitorへの耐性を獲得した新しい融合蛋白質(FGF-RNase fused protein : CL-RFN89)を作成した。今回この蛋白質が腫瘍血管新生に及ぼす影響を検討した。<方法>1)binding assay:蛍光色素物質(FLUOS)によりCL-RFN89を標識し、HUVECと15分間共培養後これを蛍光顕微鏡にて観察した。また、過剰のbFGF(15倍量)を同時添加した群を作成し、同様に観察した。2)in vitro angiogenesis assay : HUVECをコラーゲンゲルで挟み込んで培養し、3次元的に管腔形成を生じさせた。その際培養液中にCL-RFN89を各濃度で添加し、得られた管腔の長さを測定した。3)mouse dorsal air sac assay:膜フィルターで両面を覆ったチャンバーを作成し、内部にヒト扁平上皮癌細胞:A431を挿入して、マウス背部皮下に移植した。5日後これを切除し、皮下に形成された新生血管を観察した。その際にCL-RFN89をチャンバー内へ同時に添加して、その効果を観察した。また本実験前にCL-RFN89はA431に対する殺細胞効果を持たないことをMTT assayにて確認した。<結果>1)蛍光標識されたCL-RFN89の細胞膜上への結合が観察されたが、過剰量のbFGF存在下では細胞への結合は認められなかった。これは、過剰量のbFGFが細胞膜上のFGF受容体を占拠し、競合的にCL-RFN89の結合を阻害したと考えられた。2)HUVECの管腔形成はCL-RFN89に対し濃度依存性に阻害され、2μMの濃度において、何も加えないControl群に対し約43%の管腔形成を認めるのみであった。3)腫瘍のみの群では、3mm以上の新生血管を平均4.4本認めたが、2μMのCL-RFN89を添加した群では、平均0.8本認めるのみであった。<まとめ>CL-RFN89は特異的にFGF受容体を介して細胞へ結合すると考えられた。またin vitro, in vivoの系でともに血管新生阻害効果が確認された。
|