Research Abstract |
潰瘍性大腸炎(UC)活動期患者の6例とクローン病(CD)活動期患者の6例の切除標本,およびコントロールとして10例の大腸癌患者の手術で切除した小腸・大腸の組織標本を用いて免疫組織学的にVEGF,b-FGF,TGF-β_1,TGF-β_2,TGF-β_3のサイトカインの発現を観察した。なお,染色態度の程度を陰性,軽度,中等度,強度の4段階に分類して比較した。 【結果】コントロールの大腸癌患者の癌以外の小腸・大腸組織では,VEGF, b-FGF, TGF-β_<1,2,3>のいずれも全例で染色されなかった。しかし,活動期UC6例の全例で,また,活動期CD6例の全例で粘膜下組織に血管の増生がみられ,VEGFとb-FGFは特に血管壁のendothelial cellに強度に染色された。なお,UCとCDの患者間にはVEGFとb-FGFの染色態度に有意差はなかった。しかしながら,UCとCD患者の炎症細胞の周囲においては,VEGF又はb-FGFの発現はみられなかった。TGF-β_1の発現は,UC患者とCD患者の全例においてみられなかった。TGFβ_2とTGFβ_3の染色をみると,中等度の発現が活動期UCの6例中1例と,活動期CDの6例中2例の炎症性細胞にみられた。なお,他の5例中活動期UC3例の炎症性細胞には軽度の発現がみられたが,2例には発現が認められなかった。一方,他の4例中活動期CDの2例においては,TGF-β_2とTGFβ_3の発現は軽度で,2例においては全く発現はみられなかった。なお,UCとCDの患者間にはTGF-β_2とTGF-β_3の染色態度に有意差はなかった。それに加えて,活動期UCの1患者には,下肢にいくつかの皮膚潰瘍を認め,同部の生検の病理組織学的所見は,pyoderma gangrenosumであった。そして,皮膚の免疫染色の結果は増生している血管内皮細胞にVEGFが強度に染色され,b-FGFとTGFβ_2と-β_3は炎症細胞に強度に染色された。 【結論】免疫組織学的にVEGFとb-FGFが活動期UCとCDの全例に強度に染色された所見は,本症例において血管収縮を介して腸管虚血がもたらされることを意味し,UCとCDなどの炎症性腸疾患の成立には血管炎が病因として関与しているものと考えられた。
|