2001 Fiscal Year Annual Research Report
局所麻酔薬の神経線維傷害機序と神経線維再生に関する研究
Project/Area Number |
13671585
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松本 美志也 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (60243664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂部 武文 山口大学, 医学部, 教授 (40035225)
福田 志朗 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (70322245)
飯田 靖彦 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (90304485)
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Keywords | 神経毒性 / 局所麻酔薬 / 脊椎麻酔 / 家兎 / 脊髄 / グルタミン酸 |
Research Abstract |
腰部脊髄くも膜下に投与された局所麻酔薬による神経毒性の機序にグルタミン酸毒性が関与している可能性がある。細胞外液中に増加したグルタミン酸は乏突起細胞(脊髄内での髄鞘を形成)のAMPA受容体(グルタミン酸受容体の一つ)を介して乏突起細胞に傷害を与えると推測される。本年度の研究では、AMPA受容体拮抗薬がテトラカインによる神経毒性を軽減できるか否かの検討を行った。あらかじめ腰部脊髄くも膜下に薬物注入用カテーテルを埋め込んだ家兎を用いた。 1)AMPA受容体拮抗薬の投与量を決定するための研究 意識下の家兎の腰部くも膜下にYM872(AMPA受容体拮抗薬)を10μg、30μg、100μg、300μg(各n=3)投与した。YM872は用量依存性に感覚・運動神経共に遮断した。300μg群では神経遮断レベルは尾から前足まで達し、作用時間も平均2時間30分であった。腰部脊髄くも膜下にテトラカインを投与した場合、脳脊髄液中のグルタミン酸濃度が高値を示すのは投与後60分以内なので、YM872を投与した30分後にテトラカインを投与するのがよいと思われた。 2)YM872の前投与がテトラカインの神経毒性を軽減するか否かに関する研究 イソフルランによる全身麻酔下の家兎の腰部脊髄くも膜下にYM872を300μgまたは生理食塩水を投与した。30分後にくも膜下にテトラカイン1%または2%液を0.3mL投与した。以下の4群に分けた:YM872+1%テトラカイン、生理食塩水+1%テトラカイン、YM872+2%テトラカイン、生理食塩水+2%テトラカイン。家兎を麻酔から覚醒させ、7日後に神経学的所見を調べ、脊髄を灌流固定してHE染色にて組織学的検討を行った。現在のところYM872は後肢運動機能を改善する傾向にあるが、感覚障害の軽減作用はないようである。例数を重ねてゆく予定である。 また、TUNEL染色により乏突起細胞がアポトーシスを生じているか否か、また電子顕微鏡を用いて、局所麻酔薬による神経障害の生じやすい脆弱部位を特定する研究等を、さらには神経線維変性後の再生に関する研究を来年度に行う予定である。
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