2002 Fiscal Year Annual Research Report
亜酸化窒素に対する急性耐性形成機構の神経化学的研究
Project/Area Number |
13671601
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
村川 雅洋 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (90182112)
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Keywords | 全身麻酔薬 / 亜酸化窒素 / 急性耐性 / 神経伝達物質 / グルタミン酸 / 脳内微小透析法 |
Research Abstract |
現在、全身麻酔薬として最も使用頻度の高い吸入麻酔薬は亜酸化窒素である。亜酸化窒素による麻酔を長時間継続するとその鎮痛作用が減弱する、即ち、亜酸化窒素の鎮痛作用に対しては急性耐性が形成される。本研究の目的は、亜酸化窒素の長時間吸入が大脳皮質の各種神経伝達物質の遊離に及ぼす影響を検討し、急性耐性形成との関連を明らかにすることである。 本年度は、雄のWistarラット大脳皮質の脳内微小透析法により得られた灌流液中のアミノ酸(グルタミン酸、グリシン、γアミノ酪酸)含量を、クーロアレイメディカルシステムを用いて測定した。空気吸入下に対照値を測定し、その後75%亜酸化窒素・25%酸素を4時間吸入させた。亜酸化窒素吸入中止後は再び空気を2時間吸入させた。 灌流液中のグルタミン酸含量は亜酸化窒素吸入によって、1時間後、2時間、3時間、4時間後では、それぞれ対照値の70%、70%、70%、55%減少し、吸入中止後も約55%に維持された。グリシン、γアミノ酪酸には変化が認められなかった。 今回の結果、亜酸化窒素はラット大脳皮質の興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の遊離を抑制すること、その影響が吸入中止後も継続して認められることが明らかとなった。大脳皮質のグルタミン酸遊離抑制は、亜酸化窒素の麻酔作用に関与している可能性を示唆する。また、長時間吸入中のグルタミン酸遊離の経時的変化は、亜酸化窒素に対する急性耐性形成がグルタミン酸ニューロンの活動変化と関係していることを示唆する。
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