2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト尿由来転移抑制物質の作用機序の解明と臨床応用に向けた研究
Project/Area Number |
13671704
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Research Institution | HAMAMATSU UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE |
Principal Investigator |
北村 公也 浜松医科大学, 医学部, 助手 (10332694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大井 豪一 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助手 (10283368)
小林 浩 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (40178330)
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
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Keywords | 癌転移抑制 / ビクニン / 卵巣癌治療 |
Research Abstract |
我々は以前にヒト尿中に癌細胞の浸潤を抑制する物質ビクニンが存在することを報告した。今回は安価に大量生産可能である大豆ビクニンの研究成果を以下に述べる。 大豆由来トリプシンインヒビターにはクニッツ型(Kunitz Trypsin Inhibitor ; KTI)とボーマンバーク型(Bowman-Birk Inhibitor ; BBI)の2種類存在していることが知られている。大豆よりKTIとBBIを分離精製した。使用した培養細胞はヒト卵巣癌細胞HRAであり、この細胞株はヌードマウスに腹腔内移植すると癌性腹膜炎モデルを作成することができる悪性度の高い癌細胞である。KTIとBBIは名前のとおりトリプシンを効率よく抑制するが、両者ともウロキナーゼ活性には強い抑制効果を有していない。しかし、KTIは癌細胞からのウロキナーゼ産生そのものを抑制する作用を有していた。そのIC50は約2μMであった。一方、今回実験に使用した濃度の範囲ではBBIにはウロキナーゼ産生抑制作用は認められなかった。そこで、HRA細胞の浸潤、移動をKTI, BBIが阻止できるかどうか検討した。我々は過去の実験からHRAはウロキナーゼ依存性に癌細胞の浸潤・転移がおこることを確認してある。予想樋り、KTIはIC50が3μMで癌浸潤を抑制した。一方、BBIには癌浸潤抑制作用は認めなかった。HRAからのウロキナーゼ産生はTGF-β依存性である。TGF-β1によりERK1/2がリン酸化され、MAP kinaseの活性化を介してウロキナーゼ産生がおこることが知られている。そこで、TGF-β1投与と同時にKTIあるいはBBIを添加しておき、MAP kinaseの活性化を測定するとKTIによりERK1/2のリン酸化が阻止された。したがって、この実験から、大豆由来トリプシンインヒビターのなかのKTIがERK1/2のリン酸化を抑制し、MAP kinaseを介するウロキナーゼ産生を抑制し、結果として癌細胞の浸潤が抑制されることが判明した。したがって、大豆由来のKTIを大量にかつ安価に精製することにより、癌転移抑制活性を有する薬剤あるいは食品を開発することができるものと思われる。今回、このデータを特許申請した。
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[Publications] Suzuki M, Kobayashi H., et al.: "Suppression of invasion and peritoneal carcinomatosis of ovarian cancer cell line by overexpression of bikunin."Int.J.Cancer. 104. 289-302 (2003)
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[Publications] Kobayashi H, et al.: "A Kunitz-type Protease Inhibitor, Bikunin, Inhibits Ovarian Cancer Cell Invasion by Blocking the Calcium-dependent Transforming growth factor-beta 1 signaling cascade."J.Biol.Chem.. 278. 7790-7799 (2003)
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[Publications] Kobayashi H, et al.: "Bikunin target genes in ovarian cancer cells identified by microarray analysis."J.Biol.Chem.. 278. 14640-14646 (2003)
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[Publications] Kobayashi H, et al.: "The protease inhibitor bikunin, a novel anti-metastatic agent."Biol.Chem.. 384. 749-754 (2003)
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[Publications] 小林 浩, 鈴木光明: "腹膜播種・転移抑制を標的とした卵巣腫瘍の分子標的治療"今日の移植. 2002年15巻5号. 482-487 (2002)