2002 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠時のマグネシウム代謝動態の解明ならびにその生理的・病理的意義に関する研究
Project/Area Number |
13671738
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
森川 肇 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30030894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪本 義晴 奈良県立医科大学, 医学部, 助手 (40291611)
北中 孝司 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10211195)
山崎 峰夫 奈良県立医科大学, 医学部, 助教授 (00220301)
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Keywords | 血中総Mg / 血中イオン化Mg / 細胞内イオンMg / 妊娠 / 月経周期 / 妊娠中毒症 / エストラジオール / プロゲステロン |
Research Abstract |
マグネシウム(Mg)代謝動態に関する非妊婦と妊婦の比較で次の成績を得た。1)正常妊娠中期・末期の血中総Mg濃度は非妊婦や妊娠初期の値より有意に低かった、2)血中イオン化Mg濃度は、妊娠初期にすでに非妊婦の値より有意に低く、妊娠中期・末期ではさらに低下した、3)血小板細胞内イオン化Mg濃度は非妊婦黄体期では,卵胞期より有意に高く、妊娠初期の値はさらに増加した。しかし、妊娠中期・末期の値は妊娠初期より有意に低かった。4)非妊婦では血中イオン化Mg濃度と細胞内イオン化Mg濃度との間に有意の負の相関があったが、妊婦ではそのような相関関係はなかった。さらに、in vitro実験により、血小板細胞内イオン化Mgをエストラジオールは減少、ブロゲステロンは増加させることが明らかとなった。次に、妊娠中毒症妊婦のMg代謝を正常妊婦と比較することにより、次の成績を得た。1)血中総Mg濃度には差がない、2)血中イオン化Mg濃度は、有意に低い、3)細胞内イオン化Mgは有意に低い、4)イオン化Mgは細胞内、細胞外いずれのレベルも血圧と有意な負の相関を示す、5)尿中Mg排泄量が有意に多い。さらに、細胞内イオン化Mg濃度に及ぼす影響をin vitro実験系で検討すると、PTHおよびエンドセリンはいずれも低下作用をもち、妊娠中毒症血清も低下作用を示した。なお、動物実験の成績では、同じ二価陽イオンでもCaは十二指腸における能動吸収部位が妊娠によりさらに吸収能が増強するのに対し、Mgは非妊時では結腸に能動吸収があるのに、妊娠すると腸管からの能動吸収部位が無くなることが判明した。以上の成績より、妊娠に伴うホルモン環境の変化はMg代謝に変化をもたらすこと、また、妊娠中毒症が発症すると細胞内外のMg濃度が低下して正常妊婦に比べ相対的にMg欠乏といえる状態にあり、病態形成に関与することが明らかとなった。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] S.Yoshida, H.Morikawa, et al.: "Study on the absorption site of divalent cations in the intestinal loop, using the multitracer technique"Riken Review. Vol.35. 67-68 (2001)
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[Publications] M.Masuda, H.Morikawa, et al.: "Changes of sex steroids during the menstrual cycle and pregnancy alter the intracellular free magnesium level"Trace Elem Electrol.. Vol.120. 51-59 (2003)
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[Publications] 森川 肇, 佐道俊幸: "妊婦の体重管理-栄養とビタミン"産婦人科の世界. 53巻. 611-621 (2001)
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[Publications] 山崎峰夫, 森川 肇 他: "妊娠中毒症における電解質代謝の病態生理学的意義"日本妊娠中毒症学会雑誌. 9巻. 79-82 (2001)
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[Publications] 山崎峰夫: "妊娠時の血圧調節と電解質代謝動態"腎と透析. 51巻. 659-663 (2001)
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[Publications] 森川 肇, 山崎峰夫 他: "重症妊娠中毒症と血小板凝集能"産婦人科の世界. 53巻. 943-949 (2001)
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[Publications] 山崎峰夫: "妊娠中毒症の病態維持に影響を与える因子-Mgと妊娠中毒症-"産婦人科の実際. 51巻. 833-838 (2002)
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[Publications] 森川 肇, 他: "母体合併症と救急医療-HELLP症候群-"産婦人科治療. 84巻. 924-928 (2002)
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[Publications] 山崎峰夫: "妊娠中毒症-予後の改善を目指して-臨床像: Terminationの基準"産科と婦人科. 69巻. 1751-1756 (2002)
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[Publications] 山崎峰夫: "妊娠中毒症の周産期管理-治療-"日本産科婦人科学会雑誌. 55巻(掲載予定). (2003)
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[Publications] 森川 肇, 山崎峰夫, 他: "新女性医学大系24「妊娠中毒症」"中山書店. 342 (2001)
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[Publications] 森川 肇, 原田直哉, 他: "新女性医学大系2「妊娠・分娩・産褥の生理と異常」"中山書店. 382 (2001)
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[Publications] 森川肇, 山崎峰夫, 他: "新しい産科学"名古屋大学出版会. 283 (2002)