2001 Fiscal Year Annual Research Report
内耳障害におけるグルタミン酸とラジカルの相互関係に関する研究
Project/Area Number |
13671790
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
春田 厚 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (90201722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 浩万 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (20204745)
君付 隆 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (50240908)
坪井 康浩 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (70284841)
鳥原 康治 宮崎医科大学, 医学部, 助手 (30264386)
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Keywords | Trimethyltin / 外有毛細胞 / RVD / グルタミン酸 |
Research Abstract |
薬剤性内耳障害のメカニズムを考察する上で細胞に対する(1)グルタミン酸などの神経伝達物質を介した間接障害および(2)薬剤自身が細胞に及ぼす直接障害を検討していかねばならない。今まで我々は、薬剤性内耳障害における内耳グルタミン酸増加および内耳に存在するグルタミン酸トランスポーターmRNA増加を証明してきた。今回我々は、聴覚において重要な働きをしているとされる外有毛細胞を単離する事により薬剤の直接効果を見る事に努めた。 農業用殺菌剤であるTrimethyltin(TMT)により高周波領域選択性の内耳障害が起こることが他のグループによって報告されていた。OHCsに1mMTMTを投与する事によりOHCsの細胞容積の増大を認めた。その変化は、基底側(高周波領域)のOHCsが、頂上側(低周波領域)のOHCsよりも有意に大きかった(結果1)。この細胞容積変化の違いは、基底側のOHCsと頂上側のOHCsとにおける細胞容積調節能力の違いから生じているのではないかと推測し実験を行った。OHCsに低浸透圧負荷を与えると基底側と頂上側とのOHCsに、同程度の細胞容積増大を認めるが、その後、調節性容積減少(regulatory volume decrease : RVP)と呼ばれる元の細胞容積に回復していく現象を認めた。このRVDの能力は、頂上側のOHCsが、基底側のOHCsよりも有意に大きかった(結果2)。また、TMT投与30分後に低浸透圧負荷を与えると頂上側のOHCsにおいてはRVD能を認めたが、基底側のOHCsにおいては、RVD能を認めなかった(結果3)。 以上の結果より基底側(高周波領域)のOHCsにTMTを投与することによって認められた細胞容積増大は、TMTによりRVD能力が、失われたためであることが考えられた。このTMTによるRVD能力の欠如が、高周波領域選択性の内耳障害を引き起こす一因になっている事が推察された。今回得られたTMTによるRVPの欠如が、グルタミン酸とどう関わっているのかは、今後の検討課題である。
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