2001 Fiscal Year Annual Research Report
網膜-視覚中枢投射パターンの再構築による視覚機能回復
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13671839
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小阪 淳 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (40243216)
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Keywords | ラット / 網膜視覚中枢投射 / Hrk / RT-PCR / in situ hybridization / 末梢神経移植 |
Research Abstract |
ラットの片側視神経を球後部で切断し、同一個体の坐骨神経片を単離して2分割し、一本を眼球の耳側へ、もう一本を鼻側の強膜へ切開を入れて眼球内に刺入後、強膜と縫合した。1ヵ月後、Fluorogoldを一本の移植片に、もう一本にはGranular Blueをラベルし、3日後に還流固定して網膜の伸展標本を作製し、蛍光顕微鏡下で観察した。2つの色素でラベルされた網膜神経節細胞は、それぞれの移植片の側に偏在しており、近い方の移植片に再生軸索を伸長している傾向が見られた。一方で網膜中心部では、耳側、鼻側どちらか一方への方よりは見られなかった。またラベルされた細胞数は、視神経切断端に移植した場合と比べて、大きな差は見られなかった。現在、これらの結果を数値化する作業を進めている。 一方で、網膜神経節細胞を逆行性変性に至らしめるシグナル伝達経路の一端が明らかになった。bcl-2の活性を阻害して細胞死を促進するとされるHrk/DP5の発現解析を行った。まず、RT-PCRによりHrkの発現を検索した。視神経切断後、RT-PCRで径時的に網膜でのHrkの発現を調べたところ、切断後12時間で最初のHrkの発現誘導が観察され、1週間後も持続することが判明した。次にHrkのin situハイブリダイゼーションを行い、Hrk転写産物の網膜内局在を調べた。その結果、視神経切断後12時間のラット網膜で、Hrkは約30%の網膜神経節細胞にのみ発現誘導されていることが判明した。以上の結果は、この逆行性変性や、末梢神経移植による軸索伸長、また視覚中枢での投射パターンの再構築にも、本来発現しない発生初期の遺伝子が発現誘導されたり、発現が期待される分子群が哺乳類の再生系では誘導されないという分子レベルの事情があることを予想させる。2本の末梢神経移植術による軸索再生の形態学的解析と並行して、分子レベルの解析にも取り組んでゆく。
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[Publications] Wakabayashi T, Kosaka J, Honmura S.: "Up regulation of Hrk, a regulator of cell death, in retinal ganglion cells of axotomized rat retina"Neuroscience Letters. 318(2). 77-81 (2002)