2001 Fiscal Year Annual Research Report
胎児心臓手術に向けての胎児体外循環法の確立:oxidative stressによる胎児循環及び胎盤機能の病態生理解明と対策法の確立
Project/Area Number |
13671868
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
益田 宗孝 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (10190365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 久喬 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (20089923)
西田 誉浩 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (50284500)
森田 茂樹 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (70243938)
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Keywords | 胎児循環 / 体外循環 / 臍帯動脈 / 血管内皮 |
Research Abstract |
平成13年度の当初の研究計画は、体外循環による各種炎症反応と血管内皮反応の解明と血管内皮機能障害及びその制御に関する検討を目指すことであった。血管内皮機能障害及びその制御に関する検討においては測定系を確立できたことより次年度以降の研究体制が整ったと考えているが、体外循環による各種炎症反応の解明は次年度以降の検討課題として残った。 (1)胎児臍帯動脈における内皮反応及び血管平滑筋機能測定系の確立 妊娠羊7頭に対して実験を行った。胎児の体重は0.6kgから2.0kgまでと様々であった.まず、胸骨正中切開のみで体外循環を施行せずに臍帯動脈を採取して、内皮付き中膜条片標本を作製した。高カリウム脱分極刺激、U46619(トロンボキサンA2アナログ)、セロトニン投与において充分な血管平滑筋収縮が認められた。なお、カリウムは60mmol、U46619は0.1nmo1、セロトニンは1nmolを用いた。これらの収縮に続き内皮依存性(ブラジキニン、A23187(Caイオノフォア))及び非依存性(sodium nitropruside)薬剤による弛緩反応実験を施行した。ブラジキニンは1nmol、A23187は1nmol、sodium nitroprusideは1nmolを用いた。高カリウム、U46619、セロトニンの各収縮刺激に対する最大弛緩率は平均でブラジキニンでは30%、40%、27%、A23187では42%、32%、22%であったが、sodiumn nitroprusideでは120%、85%、92%と大きく、内皮依存性弛綬の割合は比較的小さい事が判明した。また、内皮障害モデルを作成し、高カリウム刺激による収縮に対するブラジキニン及びA23187による弛緩反応を測定したが、弛緩反応は完全に消失しており、前述の測定系における内皮反応測定が正確に行われていたと考えられた。これにより我々の測定系で羊胎児の臍帯動脈の血管内皮反応を充分に秤価できると考えている。 (2)体外循環による各種炎症反応の解明 平成13年度の当初の研究計画では、体外循環前、中および後における補体活性(C3a, C5a)、接着因子の発現の程度(ICAM-1, p-selectin)の測定、及び血管弛緩因子であるNOの産生をNOxを測定し、体外循環が引き起こす各種炎症反応を検討することであった。しかしながら、今回実験に使用した低体重児においてはその組織の未熟性や脆弱性により臍帯動脈の剥離や胸骨正中切開といった手術手技によるストレスにより臍帯血流量の急激な低下が認められ、体外循環を充分に確立するところまで至らなかった。体外循環回路は充填量が最小の日機装社製遠心ポンブを用いた閉鎖回路とし、回路の充填量を最小限に押さえたが、胸骨正中切開によるストレスの軽減、体温の保持、回路充填量のさらなる低下が必要であることが判明した。また、対象とした胎児の未熟性は当初の予想を超えていたため、対象胎児の胎生を引き上げる必要があると考えられた。
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