2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13671924
|
Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
佐原 紀行 松本歯科大学, 歯学部, 助教授 (70064699)
|
Keywords | 乳歯 / 歯根吸収 / 破歯細胞 / カイウサギ / 永久歯歯胚 / 歯小嚢 / セメント芽細胞 / TRAP |
Research Abstract |
歯の交換期には乳歯の歯根吸収が必ず起こり、乳歯は最終的には脱落する。しかし、破歯細胞がどのような機序で歯根表面に誘導され、吸収を開始するかについては現在でもほとんど分かっていない。そこで今回は生理的歯根吸収の開始時の破歯細胞の分化はどのようにして行われているのか検討する目的で、生後直後から5日までのカイウサギの乳歯歯根の周囲組織に見られる経日的変化を光顕・電顕レベルで観察した。出生直後には、歯根周囲の組織には破歯細胞およびその前駆細胞の特異的なマーカー酵素である酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性を持った細胞は全く認められなかった。しかし生後1日には、乳歯歯根に隣接した永久歯の歯胚の歯小嚢や乳歯歯根と永久歯の歯胚の間に認められる結合組織の血管周囲、さらには乳歯の歯根表面にもTRAP陽性の単核細胞が観察されるようになった。このような単核の細胞は細胞質内に多数のミトコンドリアを持ち、破骨細胞の前駆細胞である前破骨細胞と類似した微細構造的特徴を示していた。この時期の歯根表面にはセメント芽細胞と顕著なセメント前質が認められたが、単核の細胞が細胞突起を伸ばし歯根表面に接触している像が高頻度で観察された。さらに、単核の細胞がセメント芽細胞とCell-Cellのcontactを示す像も認められた。生後3日になると、歯根表面には単核のTRAP陽性細胞と共にTRAP陽性の多核細胞(破歯細胞)が観察されるようになった。生後5日になると破歯細胞の細胞数は更に増加し、一部では明確な吸収窩が形成されていた。今回の観察結果から、破歯細胞も破骨細胞と同様に血液由来の単核の前駆細胞から分化し、歯根表面に接することにより多核化し、歯根吸収が開始されることが明らかになった。さらに、生理的歯根吸収開始時に認められた破歯細胞の分化の過程から、ある一定の時期になると開始される乳歯の生理的歯根吸収には、永久歯の歯小嚢の細胞や乳歯の歯根表面に存在するセメント芽細胞などが歯根表面への破歯細胞の誘導やその分化過程に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。
|