2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13671924
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
佐原 紀行 松本歯科大学, 歯学部, 助教授 (70064699)
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Keywords | 乳歯 / 歯根吸収 / 歯の交換 / 破歯細胞 / 生理的歯根吸収 / 歯小嚢 / 永久歯 / 歯胚 |
Research Abstract |
歯の交換期には乳歯の歯根吸収が起こる。歯根吸収は骨を吸収する破骨細胞と同様な破歯細胞により行われる。しかし、破歯細胞がどのような機序で乳歯歯根表面に誘導され、吸収を開始するかについては現在でもほとんど分かっていない。カイウサギはヒトと同様に二生歯性の歯を持っているが、乳臼歯の歯根吸収が生後1週間以内に起こる。そこで本研究では、生理的歯根吸収の開始時の破歯細胞の分化はどのようにして行われているのか検討する目的で、生後直後から5日までの乳歯歯根の周囲組織に見られる経日的変化を光顕・電顕レベルで観察した。出生直後には、歯根周囲には破歯細胞やその前駆細胞などは全く認められなかった。生後1日に乳歯歯根に隣接した永久歯の歯胚の歯小嚢や乳歯の歯根の表面にTRAP陽性の単核細胞が観察されるようになった。この時期、歯根表面でTRAP陽性の単核細胞がセメント芽細胞とCell-Cellのcontactを示す像も認められた。生後3日になると、歯根表面には単核のTRAP陽性細胞と共に破歯細胞が観察されるようになり、生後5日には、破歯細胞の数は更に増加し、一部では明確な吸収窩が形成されていた。Wiseらは、歯の萌出が開始される直前になると歯小嚢の細胞が一時的にCSF-1,EGF, TGF-βなどを分泌することを明らかにし、これらの因子が破骨細胞の誘導・分化を促し、歯槽骨の吸収が開始されるのではないかと報告している。今回我々が観察したカイウサギの生理的歯根吸収開始時に認められた破歯細胞の分化の過程は、彼らの報告とほぼ同様な結果であり、歯の萌出と同様に、生理的歯根吸収では、永久歯の歯小嚢の細胞や乳歯の歯根表面に存在するセメント芽細胞などが歯根表面への破歯細胞の誘導やその分化過程に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。
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