Research Abstract |
摩耗粉の細胞毒性の基礎データを得るため,14種類の金属粉末(Cu,Al,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Fe,CoおよびNi)と1種類の非金属粉末(Si)を用いて,粉末とその抽出液が骨芽様細胞の細胞生存率に及ぼす影響を調べた.細胞毒性試験には骨芽様細胞のMG-63細胞を用い,一定濃度に調整した各粉末の懸濁液を3日および6日間作用させて細胞生存率を求めた.一方で,同濃度の粉末から3日間抽出した抽出液を3日間作用させて細胞生存率を求めた. Ti,Al,Cr,Ta,MoおよびFeの各粉末では,3日および6日間作用群とも高濃度において細胞生存率はわずかな低下を示すのみであった.NbおよびZrでは最大作用濃度においても対照群に近い細胞生存率を示した.しかし,他の粉末では低濃度で細胞生存率の低下が認められた.特に,VとMnでは低濃度で細胞生存率が低下した. 抽出液を作用させた場合には,Ti,Al,Cr,Ta,Zr,NbおよびFeは最大作用濃度においても細胞生存率は対照群に等しかった.一方,MnとNiを除く他の6種類の粉末では,粉末と抽出液の細胞生存率にほとんど差は認められなかった.しかし,MnとNiの抽出液を作用させた場合は,細胞生存率の低下は粉末を作用させた場合より高い濃度で現れた. 以上の結果より,Ti,Al,Cr,Ta,Zr,NbおよびFeでは粉末からの溶出による細胞生存率への影響はほとんど認められず,粉末による影響がわずかに認められた.一方,Cu,Si,V,Mo,WおよびCoでは粉末からの溶出が細胞生存率に大きな影響を及ぼしていた.しかし,MnとNiでは溶出による影響と同時に粉末自体による影響も認められた.
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