2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13672106
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Research Institution | 宮崎医科大学 |
Principal Investigator |
鹿嶋 光司 宮崎医科大学, 医学部, 講師 (30233703)
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Keywords | 顎関節症 / 下行性疼痛抑制系 / 侵害刺激 / スプリント / 三叉神経 / C線維 |
Research Abstract |
(研究実績1)顎関節症患者のスプリントの装着が、前腕の温覚闘値および温刺激による疼痛闘値を上昇させることがわかった。一方、冷覚闘値、冷刺激による疼痛闘値におよび触(振動)覚闘値には変化がなかった。顎関節症患者は下行性疼痛抑制系機能の機能不全状態であり、スプリント装着により、主にC線維を中心とした侵害刺激の抑制効果が期待できるかもしれない。さらに感覚闘値/疼痛闘値の測定は、スプリントを装着した領域(三叉神経領域)ではなく、三叉神経所属領域以外の領域(頸神経領域)で行い、主にC線維を中心とした侵害刺激の抑制効果が認められた。つまり、スプリントによる作用は所属神経支配領域を超えて、他の神経所属領域にまで及んだ。スプリント装着という行為による三叉神経領域からの求心性のインパルス、あるいはスプリント装着による情動的あるいは心理的なinputがより高位中枢に何らかの影響を与えた結果なのかも知れない。 (研究実績2)スプリントと歯が接触しているか否かを考慮しない際には、スタビリゼーション型スプリントを装着させても最大握力は増加しなかった。また、スタビリゼーション型スプリントを装着させても、等張性収縮や伸張性収縮などのような運動の滑らかさを示す因子には変化がなかった。一方、スプリント装着の際に、咬合接触があるかないかに着目して同様の検討を行ったところ、スプリント非装着咬合時とスプリント装着開口間の比較で、スプリント非装着咬合時の握力が有意に高くなり、さらにスプリント非装着時咬合時とスプリント装着開口時の比較でもスプリント非装着咬合時の握力が有意に高くなった。筋力の増加は、スプリント装着効果および装着に伴うフラセボ効果というよりもむしろ咬合接触からくる求心性の刺激が強く寄与している可能性が高いと考えられた。 (研究実績3)上腕の阻血による対向刺激が、最大咬合力および最大指圧力を有意に増加させることがわかった。一方、最大握力は阻血後もほとんど変化しなかった。この理由として、虚血による侵害刺激が脳幹部のオピオイド生成を促し、所属する神経領域を超えた範囲での疼痛を抑制されるいわゆる下行性疼痛抑制系が賦活されたものと考えられた。一方、最大握力に変化がなかった理由として、今回の阻血による侵害刺激は、測定側と反対側の同様な把握運動により誘発されたものであり、被検者が把握運動による疲労感、疼痛を経験したことによる高位中枢から負のフィードバックが影響した可能性もある。臨床症状と治療効果を経時的に検討してゆく必要があると考えている。
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