2001 Fiscal Year Annual Research Report
一酸化窒素の細胞死に対する二面性:アポトーシスの誘導と防御
Project/Area Number |
13672314
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
前田 定秋 摂南大学, 薬学部, 教授 (00135732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山室 晶子 摂南大学, 薬学部, 助手 (20340862)
吉岡 靖啓 摂南大学, 薬学部, 助手 (40330360)
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Keywords | 一酸化炭素 / アポトーシス / チトクロームC / Cyclic GMP / Protein kinase G |
Research Abstract |
ヒトニューロブラストーマSH-SY5Y細胞、PC12細胞、マウスマクロファージ様細胞RAW264において、一酸化窒素(NO)発生剤のニトロプルシッドナトリウム(SNP)、NOC18、GSNOの処置により細胞死が誘導され、これらの細胞死はカスパーゼ3阻害剤により阻害された。また、細胞死の過程でミトコンドリアから細胞質へのチトクロームCの遊離が観察された。これらのNO誘発細胞死に対する低濃度のNOの前処置による影響を検討した。RAW264細胞において、単独では細胞死を誘発しない100μMのSNP前処置により4mM SNPにより誘発される細胞死が著明に抑制された。ウェスタンブロツテイングによる解析から、低濃度SNPによる前処置はミトコンドリアからのチトクロームCの遊離を抑制することが明らかとなった。次に、低濃度SNPによる細胞死保護作用の作用機序について検討を行った。Guanylate cyclase阻害剤のLY83583あるいはODQの存在下において、低濃度SNPの細胞死保護作用は著明に抑制された。低濃度SNP前処置によるチトクロームCの遊離抑制に対してもLY83583は拮抗作用を示した。Cyclic GMP(cGMP)の誘導体で細胞膜透過性のdibutyryl cGMPによる処置は、SNP誘発細胞死に対して保護効果を示した。これらの結果から、低濃度NOは、guanylate cyclaseの活性化によるcGMPの産生増加を介して、ミトコンドリアからのチトクロームCの遊離を抑制し、細胞死を抑制することが示唆された。次に、cGMPによるチトクロームCの遊離抑制の機序について検討した。Protein kinase G(PKG)阻害剤のKT5823の存在下において、dibutyryl cGMPによるチトクロームCの遊離抑制作用及び細胞死抑制作用が減少したことから、cGMPはPKGの活性化を介して作用していることが示唆された。SH-SY5Y細胞においてもRAW264細胞と同様に、低濃度のNOC12の前処置によりSNP誘発細胞死が抑制された。また、LY83583は、NO誘発細胞死に対して促進効果を示した。このことから、SH-SY5Y細胞では低濃度のNOが細胞死誘導と細胞死抑制の両作用を同時に発揮していることが考えられ、LY83583が細胞死抑制のみを阻害したために細胞死が促進された可能性が考えられる。これらの結果は、神経細胞においてNOがその生存維持に重要な役割を果たしていることを示唆している。現在、cGMPによるPKGの活性化を介したミトコンドリアからのチトクロームCの遊離抑制機序について詳細に検討を行っている。
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