2003 Fiscal Year Annual Research Report
脳内の神経細胞位置決定分子リーリンの会合体形成機構の解明と神経疾患の治療への応用
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13672318
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Research Institution | Nippon Veterinary and Animal Science University |
Principal Investigator |
楯 直子 日本獣医畜産大学, 獣医学部, 助教授 (00201955)
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Keywords | 神経細胞 / リーリン / 会合体 / 構造 |
Research Abstract |
リーリンは脳の発生過程において規則的な層構造を形成する際の神経細胞の位置決定分子として同定されたが、その作用機構の詳細は不明であった。報告者はこれまでにリーリンの機能発現にはその会合体形成の過程が極めて重要であることを示しており(PNAS, USA,97,9729-9734(2000))、その後、本科学研究費補助金を受けてさらに会合体形成機構を解明するために、会合体形成に必要不可欠であるCR-50エピトープ部位の同定及び、その構造と物性の解析を中心に研究を進めてきた。リーリンはアミノ酸3461残基からなる巨大な蛋白質分子である。そこで今年度はさらに会合体形成に必須であることが判明しているCR-50エピトープ部位以外の部位について、構造、物性の解析を行った。まず、CR-50エピトープ部位のすぐ上流に位置するF-spondinとのアミノ酸配列の相同性を有する部位(以下、F-spondin様部位と記す)の蛋白質大量発現系を構築した。その後、F-spondin様部位を精製し、2次構造を解析したところ、α-helix 20%,β-sheet 50%のβ型蛋白質であった。また、ゲルろ過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法により解析したところ、F-spondin様部位は単量体で存在しているのではなく、多量体を形成していることも明らかになった。この結果からリーリンの機能発現に深く関わっている会合体の形成にはCR-50エピトープ部位のみならず、そのすぐ上流のF-spondin様部位も密接に関連していることが明らかになった。次にCR-50エピトープ部位の下流のリーリンリピート(リピートI〜VIII)と名付けられたアミノ酸配列の相同性の高い、くり返し8個存在するリピート部位に着目した。このうちの一つ、リーリンリピートIを選んで蛋白質大量発現系を構築し、リーリンリピートI蛋白質を精製した。このリーリンリピートIの2次構造を調べたところ、α-helix 40%,β-sheet 40%のα+β型蛋白質であることがわかった。 また、今年度は核磁気共鳴分光法によるリーリン蛋白質の構造情報の収集を目的として、生体分子の構造解析に適用できる新たな観測技術の開発も行った。本来は固体NMR観測技術であるマジック角試料回転法を溶液法に適用することで、従来は困難だった化学シフト異方性テンソル値を決定する研究を行った。
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[Publications] Kurita, J., Shimahara, H., Tate, N., Tate, S.: "Measurement of ^<15>N chemical shift anisotropy in a protein dissolved in dilute liquid crystalline medium with the application of magic angle sample spinning."J.Magnetic Resonance. 163. 163-173 (2003)