2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13672372
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉田 郁也 北海道大学, 先端科学技術共同研究センター, 助手 (90240275)
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Keywords | 不活性X染色体 / ヘテロクロマチン / EC細胞 / マウス / ヒストンのアセチル化 / Xist RNA / 晩期DNA複製 / macroH2A1.2 |
Research Abstract |
哺乳類のX染色体はいったん不活性化するとヘテロクロマチンを形成して、その状態は体細胞分裂を通じて安定して維持される。一方、胎生期に卵母細胞が形成される際に、不活性X染色体は再活性化され、2本の活性X染色体を持つに至る。卵母細胞や初期胚と良く似た性質を持つES, EC細胞などのうち、あるものでは細胞融合などで導入された不活性X染色体のヘテロクロマチンをすみやかに解除して、雌減数分裂で起こるのと同様の再活性化を引き起こすことが知られている。このように体細胞におけるヘテロクロマチンの安定性と、未分化細胞におけるその解除とは著しい対照を為しており、染色体の機能・構造が細胞内の環境に応じて変化して発現調節を行う好例と考えられている。しかし、不活性化がこのように劇的な現象であるにもかかわらず、体細胞と未分化細胞における違いを発露させうる物質的な基盤の違いは殆ど明らかにはなっていない。本研究では未分化EC細胞MC12に保持されている不活性X染色体が、一見して正常なヘテロクロマチンを形成しているにも関わらず、体細胞中の不活性X染色体に比べて著しい頻度で再活性化を起こすことを明らかにした。単離したクローンのうち約半数で、再活性化はマーカーとして用いたhprt座にとどまらず、X染色体全長の再活性化が観察された。このことはMC12細胞中にはX染色体の不活性状態を維持するのに必要な因子が欠乏していることを示している。調べ得た範囲では、MC12の不活性X染色体は体細胞のそれと性質を同じにしていることから、この因子は、不活性X染色体に特有な性質の呈示に必要な既知の因子、例えば、晩期複製、ヒストンの低アセチル化、macroH2A1.2の集積、Barr小体の形成(染色体の異常凝縮)、DNAの高メチル化、Xist RNAの局在等ではない。今後はMC12を用いてヘテロクロマチンの維持に働く因子を同定していきたい。
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Research Products
(1 results)