2003 Fiscal Year Annual Research Report
ネフローゼ患者リンパ球の免疫抑制剤感受性に及ぼす血清脂質の影響とその臨床的意義
Project/Area Number |
13672402
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
平野 俊彦 東京薬科大学, 薬学部, 助教授 (90173252)
|
Keywords | 末梢血リンパ球 / 薬物感受性 / 免疫抑制薬 / 血清総コレステロール / LDLコレステロール / シクロスポリン / LDL受容体 / ネフローゼ症候群 |
Research Abstract |
ネフローゼ症候群におけるシクロスポリン(CsA)感受性低下の成因を、ネフローゼに特有の高コレステロール血症とリンパ球のCsA感受性との観点から検討した。24例のネフローゼ患者を対象とし、末梢血単核細胞(PBMC)の幼若化を50%抑制するCsA濃度(IC50ng/ml)と、治療前の患者の臨床検査値(血清脂質、タンパク濃度、尿中タンパク濃度など)との関連を調べた。またPBMC表面上のLDL-受容体(LDL-R)を、抗LDL-R抗体を用いたフローサイトメトリーで測定し、IC50値との関連を検討した。CsAのIC50値と血清総コレステロール濃度(TC)あるいはLDL一コレステロール濃度(LDL-C)との間に有意な正の相関を認めた(各々Pく0.0003,P<0.0034)。一方CsAのIC50値とCsA投与1週間後の尿中タンパク減少率との間に、有意な負の相関を認めた(P<0.0006)。また治療前のTCあるいはLDL-Cは、尿中タンパク減少率と有意な負の相関を示した(各々P<0.0057,P<0.0399)。しかし、PBMC中のLDL-R陽性細胞率とCsAのIC50値との間に有意な負の相関は見られなかった。以上の結果から、治療前の患者PBMCのCsA感受性は、CsAの治療効果と相関することを示した。PBMCのCsA感受性は、TCあるいはLDL-Cにより影響を受け、これらコレステロール濃度の高い患者ではCsA/の治療効果が低いものと思われた。CsAはLDLと複合体を形成し、細胞表層のLDL-Rを介してT細胞に取り込まれ、免疫抑制効果を発現すると考えられていた。しかし本検討から、ネフローゼに頻発する高コレステロール血症によってLDL-R数が減少し、CsA感受性が低下するという可能性は低いと考えられた。CsA感受性の個人差の成因には、LDL-R発現率の個人差以外の要因が重要と考えられる。
|