2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13672406
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Research Institution | Fukuyama University |
Principal Investigator |
金尾 義治 福山大学, 薬学部, 教授 (70103075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 哲郎 福山大学, 薬学部, 助教授 (90163542)
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Keywords | 合成高分子 / 抗癌剤 / 腫瘍 / EPR効果 / 高分子結合体 |
Research Abstract |
癌の薬物化学療法においては,細胞毒性の高い抗癌剤をいかに腫瘍組織へ集積化するかが大きな課題となっている.本研究では,ポリビニルアルコール(PVA)を抗癌剤薬物担体として利用することを目的に,FITC蛍光標識,放射ヨード標識を施し,基本的な体内動態について検討を行った. PVAは投与量非依存的に血中から消失し,広い濃度範囲で線形性を示すことが明らかとなった.尿中排泄は投与後1ケ月で終了し,糞中排泄はさらに持続する傾向がみられた.肝組織を蛍光顕微鏡により観察すると,肝実質細胞中に顆粒状のPVAの分布が認められた.以上の結果を総合すると,PVAはfluid-phase endocytosisにより徐々に肝実質細胞に取り込まれながら,胆汁を介して糞中に排泄されることが示唆された. また,PVAをS180担癌マウスに投与すると腫瘍に集積することが明らかとなった.さらに蛍光顕微鏡観察においても,腫瘍組織中に分布することが確認され,PVAの腫瘍集積化はEPR効果に由来するものと考えられた. さらに本研究では,PVAに抗癌剤ダウノルビシン(DNR)を共有結合させた高分子化医薬(高分子プロドラッグ)の合成を試みた.まず,DNRにpH感受性スペーサーとしてcis-アコニチル基を導入し,これをオクタメチレンジアミン基を導入したPVAと結合した.得られたポリビニルアルコール-ダウノルビシン結合体からのDNRの遊離を調べたところ,中性・アルカリ性領域では認められず,酸性領域で遊離することが明らかとなった. さらに,in vitroにおいて細胞増殖抑制効果を示し,リソソーム内低pHでの選択的な薬物放出が示唆された.今後,ドキソルビシンあるいはパクリタキセルのcis-アコニット酸誘導体を合成し,酸性条件下で選択的に切断されるような高分子プロドラックの開発を進めたいと考える.
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