Research Abstract |
今年度は,乳酸脱水素酵素(LDH, E.C.1.1.1.27)と結合するλ型Bence Jones蛋白(BJP)について,結合にLDH分子のNAD^+結合領域が関与しているかどうか確認するため,以下のような実験を行った。 1.精製した患者BJPをNHS-activated Superose 4Bにカップリングさせaffinityカラムを作製した。このカラムに精製LDH,およびその精製LDHにNADHを2.0mol/Lの濃度になるよう混合したものをそれぞれ添加し,添加前と,添加後の未吸着画分で溶出されたLDHアイソザイムの濃度比を比較し,その回収率から親和性の有無を判定した。その結果,NADH添加前では,LDH3,4,5との強い親和性が観察され,LDH2も弱いながら結合していることが判明した。しかし,精製LDHにNADHをしたものでは,いずれのアイソザイムもBJPに再結合できなくなることが確認されたことから,LDH分子のNAD^+結合領域がNADHによりブロックされているため結合できない可能性が示唆された。 2.NAD+のfragmentである5'-AMP Sepharose 4BカラムにBJP-LDH複合体を添加し,未吸着分画を溶出させた後,1mmol/L NADHにて吸着分画を溶出させ,各分画のLDH活性およびアイソザイム分析を行い,複合体の解離の有無を確認した。その結果,未吸着分画にはLDH活性のないBJPのみが,また吸着分画には正常のLDHアイソザイムが溶出され,5'-AMPカラムを通過させることにより,BJP-DH複合体が解離することが確認された。5'-AMPが結合する部分はLDH分子のNAD^+結合領域であることから,患者BJPは5'-AMPと競合して解離した可能性が考えられた。 3.精製したLDHを5'-AMPカラムにカップリングさせ,精製患者BJPを添加後,未吸着分画,吸着分画をそれぞれ溶出させLDH活性およびアイソザイム分析を行い,5'-AMPに結合したLDH分子は患者BJPと再結合ができるかどうか確認した。その結果,未吸着分画にはLDH活性のないBJPのみが,また吸着分画には正常のLDHアイソザイムが溶出され,5'-AMPに結合したLDHとは再結合できないことが確認された。また,対照として,LDH-IgA複合体例についても実験を行ったが,同様な結果であり,結合にはLDH分子のNAD^+結合領域が深く関与している可能性が示唆された。
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