2002 Fiscal Year Annual Research Report
フォン・ウイルブランド因子切断酵素活性測定の臨床的意義の検討
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13672428
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川合 陽子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00129727)
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Keywords | フォンウイルブランド因子(vWF) / vWF切断酵素 / 血管内皮細胞障害 / 同種骨髄移植 / 血栓性微小血管症 / 肝静脈閉塞疾患 / ADAMTS 13 / メタロプロテアーゼ |
Research Abstract |
フォン・ウイルブランド因子切断酵素(von Willebrand factor-cleaving protease : vWF-CP)は、血管内皮細胞で産生される超高分子vWFマルチマーを切断する酵素で、vWFの関与する血栓制御の中心を担っている蛋白として注目されている。一方、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura : TTP)と溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic symdrome : HUS)は、ともに微小血管障害を病態とした極めて類似した疾患であると考えられているが、TTP患者血漿中では、vWF-CPの欠損または低下が認められ、両者は異なる病態であることが近年明らかにされてきた。我々は昨年度、vWF-CP活性測定の比較的簡便なアッセイ系を確立し、先天性・後天性TTP患者の血漿中では健常人と比較しvWF-CPが著減しており、後天性ではvWF-CPに対するインヒビターの存在することを明らかにした。本年度は、同種骨髄移植(allo-BMT)の合併症におけるvWF-CPの関与を検討した。BMT施行後の血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy : TMA)合併例4例または肝静脈閉塞疾患(veno-occulusive disease : VOD)合併例2例について測定を行なったところ、vWF-CP活性は、TMA合併例では低下が認められず、VOD合併例で低下が認められた。BMT後のTMAは、抗ガン剤、放射線照射、移植片対宿主病、ウイルス感染など多要因による血管障害に、免疫抑制剤による血管内皮細胞障害が加わるが、vWF-CPの関与は低いと思われた。一方、vWF-CPは、肝臓で生成されるメタロプロテアーゼ(ADAMTS 13)であると近年同定された。VODにおけるvWF-CP低値の一要因に肝臓の血管の関与も示唆された。本酵素活性の測定は、TTPやVODをはじめとする血管障害の病態を解明する検査として臨床的に有用と思われた。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 片桐尚子, 川合陽子, 他: "血栓性微小血管症におけるvon Willebrand因子切断酵素活性測定の臨床的意義"臨床病理. 51(8)(in press). (2003)
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[Publications] 川合陽子: "血管における血栓制御機構と内皮細胞障害マーカー"日本臨床検査自動化学会会誌. 27(5). 619-627 (2002)
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[Publications] 川合陽子: "血管内皮細胞由来の血栓関連因子とずり応力"血栓と循環. 9(4). 412-413 (2002)
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[Publications] 川合陽子: "血液検査の標準化"臨床検査. 46(8). 887-891 (2002)
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[Publications] 川合陽子: "特発性血小板減少性紫斑病"medicina. 38(13). 2034-2036 (2001)