Research Abstract |
1.対照群の統計解析 前年度年の調査結果について,新たに「子どもの社会性」を解析項目に加え,親の共感経験,養育態度,感情の言語化とともにその関連をパス解析した。「子どもの社会性」は,子どもの他者とのコミュニケーションにかかわる子ども自身の社会的スキルを測定するkiss-18(Kikuchi's Social Skill Scale・18項目版)を用いた。 (1)調査項目全体のモデルの検証:研究計画段階で作成した小学生から中学生の子どもの社会性,親の共感性,感情の言語化とのモデルは適切なモデルとはいえず,子どもの社会性が親の共感性,感情の言語化に直接的な影響を受けているという仮説は否定された。このことから,子どもの社会性には他の潜在変数が影響を与えている可能性があることが強く示唆された。また,小学生,中学生,高校生の学年別で検討しても同様の結果であった。 (2)子どもの社会性にかかわる要因の検討:子どもの社会性が,親自身がうけた養育態度との関連を検討するためのモデル(世代間伝播のモデル)では,子どもの社会性は親自身が受けた養育態度に影響を受けている可能性が示された。この結果では,父親が自身の父親から受けた養護的養育態度,自身の母親から受けた養護的養育態度,過保護的養育態度に影響を受けていた。しかし,母親が自身の母親から受けた養育態度からは,直接的な影響を受けていなかった。これに関しては,子どもの社会性は母親自身が受けた養育態度意外にも,何か潜在的な影響をうけているとも考えられるが,別の見方をすれば,子どもの社会性は父からの影響を受けるのではないかとも考えられる。また,学年別に見ると,小学生,高校生ではモデルが適切ではなく,中学生では,父親が自身の父親から受けた過保護的養育態度と負の相関,母親が自身の母親から受けた過保護的養育態度と正の相関が認められた。 2.次年度の調査準備 すべての調査用質問紙をマークシート化し,印刷が完了した。調査要因の地域性を考慮し,また対称群の調査数をより増やすために前年度調査地域とは別の県の調査について交渉を開始した。また,神経症群の調査対象者の抽出を行って交渉を開始した。
|