Research Abstract |
これまで,医師と小児がんの子どもまたはその家族との医療面談でのやりとりのデータの分析をおこなってきたが,医師と患者側との関係は,それだけにとどまらず,いろいろな場で展開されるものであるために,それだけではどうしても場面を切り取った分析になってしまうというジレンマを感じていた.そこで,今年の研究では,ある病院でのフィールドワークを入れた.具体的には,子どもとその家族(保護者と兄弟)を対象に,病名をふくめた病気の説明と闘病経験についての聞き取り,そこで働く医師とナースに,病気の説明を中心とした子どもとの関わり方についての聞き取りを通して,病名を知ることが子どもにとってどのような変化をもたらすのかを検討した. 多くの子どもは,治療の選択は医師に任せて,自分は医師が決めてくれた治療に向き合うという役割分担をしていた.また,病名を聞いたこと自体によるショックはうけていなかったが,入院期間の長さ,治療や検査にともなう苦痛,副作用による外観の変化などによって動揺し,その後も闘病意欲のゆれを経験していた.その時に子どもたちの志気を支えたものには,闘病の理由を知ること,小目標の設定,治ると信じられること,周囲からの精神的サポートがあり,これらの事柄が整うためには,子どもに病名を説明することが重要であると考えられた.この結果は,3つの論文にまとめる予定であり,すでに1つは投稿し,査読を通っている. アメリカでのデータ収集については,今年から始めたいと考えていたが,まだ相手先の倫理委員会からの許可がとれていないために,次年度にもちこしの課題になってしまった.
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