2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13672524
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Research Institution | Aichi Prefectural College of Nursing & Health |
Principal Investigator |
鎌倉 やよい 愛知県立看護大学, 看護学部, 教授 (00177560)
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Keywords | 在宅高齢者 / 嚥下障害 / 嚥下訓練 / 声門上嚥下 / バイオフィードバック / 呼吸軌跡 / 嚥下性無呼吸時間 |
Research Abstract |
在宅高齢者の嚥下障害を改善するために、嚥下と呼吸に基づく嚥下訓練の効果が検討された。 被験者は、嚥下障害リスク評価尺度によるスクリーニング、MacLabシステムを使用した嚥下時の呼吸(R)と舌骨上筋群の表面筋電図(EMG)との同時記録、嚥下造影(videofluorography : VF)によって2名が特定され、そのうち同意が得られた1名である。VFでは、気管への不顕性誤嚥が認められた。 訓練方法として声門上嚥下訓練(supraglottic maneuvers : SGM)が採用され、嚥下時の呼吸軌跡がバイオフィードバックとして用いられた。バイオフィードバックには、MacLabシステムによる同時記録の画像を液晶プロジェクターによって映写する方法が用いられた。 実験デザインにはABABA法が用いられ、訓練は1日を1セッションとして5ml水嚥下を10試行実施し、SGMの遂行数と分割嚥下の発現数が測定された。ベースライン条件(BL)として5セッションが実施され、呼吸型が安定した時点で介入条件1(F1)を10セッション実施し、その後介入条件を除去する手続きがとられ(F0)、介入条件2(F2)、F0の順に、合計22セッションが3ヶ月にわたり実施された。F1は、呼吸周期上の嚥下時期の図による教示と呼吸軌跡のバイオフィードバックであり、F2はF1に加えてSGMの方法に関する言語教示である。その結果、分割嚥下はF1によって0試行となり、F0でも維持された。SGMはF1では遂行数が増加したがF0では維持されなかった。F2によって再びSGM遂行数が回復し、その後F0でも維持された。訓練終了後のVFでは、40%バリウム5ml嚥下において梨状窩への貯留はあったが誤嚥は認められなかった。さらに、10mlの嚥下では、咽頭クリアランスが良好であり、安全な嚥下が遂行された。以上から、分割嚥下を改善させる効果が確認されたが、SGM遂行を維持するためには呼吸周期上の嚥下時期に関する手がかりを与える必要性が示唆された。 次に、MacLabシステムによるRとEMGの同時記録に加えて、VFを同時に記録した。「pa」の発声を嚥下の前後に求め、EMG上ではアーチファクトが、VF上では開口画像が記録され、これを同期指標とした。被験者は40%Ba5ml嚥下を10回実施した。分析は、嚥下前の「pa」を基準にして経過時間を測定し、MacLabシステム上の画像と、VF上の舌骨・舌根・喉頭・軟口蓋・食塊の動きとの関係を比較した。その結果、嚥下性無呼吸期間は軟口蓋挙上に遅れて始まり、喉頭が下降し始めて元の位置に復帰するまでの中間時点まで継続した。以上から、高齢者では嚥下時に喉頭が下降する途中で呼吸が再開されることが示唆された。
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