2001 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の自我発達を促す援助方法としての「自分史」活用の効果の検討
Project/Area Number |
13672529
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
沼本 教子 神戸市看護大学, 看護学部, 教授 (00198558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田上 明日香 神戸市看護大学, 看護学部, 助手 (80316059)
浅井 さおり 神戸市看護大学, 看護学部, 助手 (20326317)
西田 真寿美 神戸市看護大学, 看護学部, 助教授 (70128065)
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Keywords | 高齢者 / 自我発達 / 自分史 / 生涯発達 / 心理的健康 / 看護援助 |
Research Abstract |
目的:長寿化の伸展する現在高齢者が心身共に健康に老いることの重要性が指摘されている。生涯発達論的な立場から、老年期の発達課題である「自我の統合」を促進する看護援助の重要性が増している。看護援助の場では高齢者が人生の歴史を振り返る内容として「語りを聴く」「自分史を書く」ということで自我発達を促進する援助が可能であると考えられ、その効果を検討することが必要である。本年度は施設サービスを利用する高齢者が人生をどのように振り返り語るのかを、口述ライフストーリーの分析を通して量的・質的に検討し、語りの様相と高齢者看護ケアにおける意義を明らかにすることを目的にした。 方法:兵庫県下の1老人保健施設における入所サービス利用者のうち、痴呆がなく研究協力が得られた9名の65歳以上の高齢者(男性2名、女性7名)を対象として、口述ライフストーリーを聴きとり、終了後(1)現在の生活についての考え、思い(2)将来についての希望(3)昔を振り返り、語ったことについての感想、について質問を行った。調査期間は平成13年5月〜10月で実施した。分析は逐語録を数量的記述及び質的内容分析を行った。 結果:個人のライフストーリーは歴史・社会的な背景や文化的な影響を受けながらも、個別性・多様性に富んだ内容であった。過去の人生時期にかけられた時間には濃淡があり、その人にとって意味のある時間と人生の構造を知る手がかりになることがわかった。また、時代や社会変動の影響を受ける教育の状況・仕事への従事・死生観のあり方・地域特性などの対象者の背景が反映されていることが示唆された。さらに、性差による違い、語り手である対象者がこだわっている重要他者の存在、心理的居場所の存在、世代性の認識、空白の時間の存在が示されていた。 この結果から、次年度の「自分史を書く」方法への示唆が得られたと考えられ高齢者の自我発達を促す看護援助としての効果を検討していく予定である。
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