2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680086
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野澤 秀樹 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (00036998)
|
Keywords | フランス語圏地理学 / 認識論的切断 / 人文地理学の認識論 / 概念と概念化 / 実在と認識 / 主観と客観 / 理論と経験 |
Research Abstract |
英米圏主流の地理学界においてフランス語圏地理学は特異な存在である。60年代末から70年代は社会の激動期であるとともに現在からみると学問の変革期でもあった。それは地理学にとっても例外ではない。 英米圏では理論計量地理学の新実証主義地理学に対して人文主義地理学や主にマルクス主義に依拠するラディカル派地理学から鋭い批判が加えられ、地理学に大きな転回が見られたことはよく知られている。一方フランス語圏では理論計量地理学の方法の受容とそれに対する批判とがほぼ同時に影響を与え複雑な状況を呈した。その過程でフランス語圏の地理学においては、地理学の学的構造に関して根底的な問いが議論された。 それは第一に、計量革命と称せられた理論計量地理学と伝統的な古典地理学の間に、また、理論計量地理学=新実証主義地理学とそれを批判する人文主義地理学やラディカル地理学などとの間に「認識論的切断」が認められるか否かの間題である。ここで「認識論的切断」とは、G.バシュラール、L.アルチュセールの言う意味のそれであり、「プロブレマティーク」、すなわち「問いの構造(構え)」の変化、「切断」を捉えようとするものである。こうした立場に立つことによって人文地理学の認識論が問い直されることになる。 ジュネーヴ大学のC.ラフェスタンらを中心としたスイスの地理学者たちの議論がそれである。たとえば、人間の科学は、その対象が、物質的実在そのものではなく、物質的実在が構成する歴史的現実である。そのことを認めることによって自然地理学とはことなった人文地理学の対象が明らかとなり、この問いそのものがプロブレマティークの転回となる。こうして地理学における「実在と認識」、「主観と客観」、「理論と経験」、「概念と概念化」等基本的事項が厳密に議論されることになる。
|
Research Products
(1 results)