Research Abstract |
平成15年度は,昨年度行ったゲル膜に対する尿成分収着量測定と示差走査熱量分析による膜中水の状態の検討を,さらに詳細に行った.ゲル膜は,オムツの吸水材料のモデルとして用いている.完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を乾燥して得られたベース膜を,グルタルアルデヒドで不溶化することにより,含水率が異なる10種類の膜を調製した.得られた膜に対して,塩化リチウム,塩化セシウム,ヨウ化リチウム,ヨウ化セシウムの収着量を水溶液系で測定した.収着等温線はすべて分配型となった.膜中水体積を基準とした塩の分配係数は,高含水率ではいずれも1に近いが,低含水率になるにつれて,ヨウ化物では1より大きくなり,逆に,塩化物では1より小さくなった.示差走査熱量測定からは,膜中の水は,自由水,凍結結合水,不凍水の3つに分類され,膜中水に占める不凍水の割合は含水率の低下とともに増加した.低含水率のゲル膜が塩収着に対して高選択性となるのは,膜中の凍結水と不凍水が塩に対して異なる溶解性を持つためと考えられる.凍結水に対する分配係数を1と仮定し,また,不凍水に対する分配係数をパラメータとし,示差走査熱量測定より見積もられた凍結水と不凍水の分率を重み付けして,これら2つの分配係数を平均することにより膜全体の分配係数が表せるとした「2状態モデル」を用いて結果が説明できるか試みたところ,ヨウ化リチウムを除き,不凍水に対する分配係数を含水率によらず一定として説明できることがわかった.モデルを用いた解析により,自由水に比べて不凍水中では,塩化物は溶解しにくいのに対し,ヨウ化物は溶解しやすいことがわかった.膜母体の持つ水酸基のドナー性が関与していると思われる.また,ヨウ化リチウムに関しては不凍水に対する溶解度は含水率の低下にともなって急激に増加し,リチウムイオンと膜基質との直接の相互作用が示唆された.
|