Research Abstract |
銅フタロシアニン染料に対して分解能を有する、糸状菌ミロテシウムベルカリア由来の酵素である、ビリルビンオキシダーゼ(BOと略す)に因る衣料用染料の分解について検討した。酵素による衣料用染料の分解に関する他機関からの報告例としては過酸化水素による漂白処理にペルオキシダーゼを併用する系に関するものは多いが酵素単独で衣料用染料を分解する系に関する報告例は少なくラッカーゼに関する報告例が見られる程度でしかも分解率が低かったが、本BO酵素の場合には銅フタロシアニン染料を分解するだけでなく、アントラキノン系やアゾ系の多種の染料に対しても強い分解能を有する事が本研究により明らかになった。 対象とした染料は、アントラキノン系染料10種(C.I.Acid Green 25,C.I.Acid Green 27,C.I.Acid Blue 25,C.I.Acid Blue 40,C.I.Acid Blue 41,C.I.Acid Blue 45,C.I.Acid Blue 80,C.I.Reactive Blue 2,C.I.Reactive Blue 4,C.I.Reactive Blue 19)、およびアゾ系染料8種(C.I.Direct Red 2,C.I.Direct Blue 6,C.I.Direct Blue 15,C.I.Direct Green 59,C.I.Direct Black 22,C.I.Direct Black 51,C.I.Direct Vioret 48,C.I.Reactive Black 5)、および銅フタロシアニン染料(C.I.Direct Blue 86)の計19種である。脱色挙動の追跡は、各染料水溶液について、恒温状態に保った中で、酵素添加前および添加後の一定時間経過ごとに紫外可視吸収スペクトルを測定すると同時にフォトダイオードアレイ紫外可視検出器によるHPLC分析を行った。測定温度は37℃、pH8.40。得られた主な成果は以下の通りである。 1,いずれの染料についてもHPLCに因る脱色過程の追跡は以下の分析条件で可能であった。カラム(ODS;6Φ×200mm)、溶離液アセトニトリル:メタノール:0.05Mリン酸水素アンモニウム水溶液3:1:6、流量1.5ml/min、注入量20μml、ポンプ圧65kgf/cm^2、分析温度20℃。 2,BO酵素によりいずれの染料も著しく吸収スペクトルが変化し、無色になったものA.G.25,A.G.27,A.B.25,R.B.4,R.B.19,淡黄色になったものA.B.41,A.B.45,D.G.59,淡赤色になったものA.B.40,R.B.2,D.B.6,D.B.15,色相は変わらず薄くなったものA.B.80,黒から濃い赤になったものR.BK.5,黒から濃い黄色になったものD.BK.51,赤から濃い黄色になったものD.B.2があった。 3,HPLC分析により、いずれの染料についてもBOによる分解が確認できた。 4,ピークの分離の良い染料について分解生成物の分取を試みている。
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