2002 Fiscal Year Annual Research Report
近世遺跡出土陶磁器の生産地推定のための基準資料の体系化に関する研究
Project/Area Number |
13680178
|
Research Institution | TOKYO GAKUGEI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
二宮 修治 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (30107718)
|
Keywords | 生産地推定 / 近世陶磁器 / 生産と流通 / 胎土分析 / 釉薬分析 / 微量成分元素存在量 / 機器中性子放射化分析 / 誘導結合プラズマ発光分光分析 |
Research Abstract |
近世の陶磁器の生産地推定は、文化財科学における重要な研究課題の一つである。陶磁器の生産地を明らかにすることは、その遺跡と他遺跡・他地域との関係を推測する重要な手がかりが得られる。さらに、同一の生産地でつくられた製品の分布を調べることにより、過去における生産の規模や交易・貿易の実態などを論じることが可能となる。一方、生産地の拡散や流通機構の変化にともない、江戸中期以降、きわめて多種多様の陶磁器が各地で生産、消費されるようになった。かかる観点からも、江戸時代の陶磁器の生産地推定の重要性がある。 本研究では、これまでの成果をデータベース化すべき、生産地遺跡を組織的に増やし、さらに消費地遺跡の系統的選定を行い、それらの遺跡より出士する陶磁器片の生産や流通に関する研究のための基準資料の体系化を目的として、機器中性子放射化分析(INAA)、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES)、エネルギー分散型蛍光X線分析(EDXRF)により化学組成に関する基礎的データの蓄積を行い、多くの生産地の識別に元素存在量が極めて有効であることが明らかした。さらに、釉薬の非破壊蛍光X線分析および測色分析にもとづくキャラクタリゼーションにより陶磁器の特徴を見出す可能性が示された。 本研究の成果とその意義は、分析化学的手法による陶磁器の胎土や紬薬に含まれる諸種微量成分元素の化学的属性を抽出することにより、生産地遺跡・消費地遺跡より出土した陶磁器を客観的な基準で分類でき、生産や流通に関する詳細な議論が可能となった。考古学・美術史学と分析化学と共同研究の体系的な組織化が進み、多くの成果が蓄積され、今後の発展が期待されている。
|
-
[Publications] 村上 隆, 二宮修治, 沢田正昭, 佐藤 泰, 櫻井吉晴, 伊藤真義: "肥前産陶磁器の流通に関する分析科学的調査(1)-国内外に流通する見込荒磯文、日字鳳凰文磁器の生産地推定"日本文化財科学会第18回大会講演要旨集. 162-163 (2001)
-
[Publications] 二宮修治, 村上 隆, 沢田正昭, 菊池誠一: "Spring-8を用いた高エネルギー放射光蛍光X線分析による陶磁器分析の基礎的研究"日本文化財科学会第18回大会講演要旨集. 164-165 (2001)
-
[Publications] 二宮修治: "貿易陶磁から見た国際交流-産地推定の研究成果をふまえて-"日本文化財科学会 『考古科学の最前線〜博多湾沿岸をめぐる国際交流〜』. 26-31 (2002)
-
[Publications] 二宮修治: "「ベトナム青花の自然科学的研究-陶磁器胎土と釉の科学分析-」『ベトナム青花-大越の至上の華-』(担当執筆)"町田市立博物館. 11-17(106) (2001)
-
[Publications] 大沢眞澄, 藤波朋子, 二宮修治, 菊池誠一: "近世日越交流史-日本町・陶磁器(櫻井清彦・菊池誠一編)(分担執筆)"柏書房. 333-363(374) (2002)
-
[Publications] 二宮修治: "中世総合資料学の提唱-中世考古学の現状と課題(前川 要編)(分担執筆)"新人物往来社(印刷中). (2003)