Research Abstract |
本研究の目的は,図形の概念形成を促進する学習指導の方法を確立することである。 本年度は,図形の概念の構成要素の関係に着目する場面を設定した授業を通じて,図形の概念を弁別することができない状態1の児童が,相違点を基に図形の概念を弁別することができる状態2に到達できることを検証した。具体的には,理解の状態向上を促す要因を考慮して小学校2年生の三角形・四角形単元の授業を実施し,その前後で四角形の分類に関する質問紙調査を行い,理解の状態向上を確認した。この授業で考慮した要因は以下の通りである。すなわち,第一に,着目すべき構成要素の関係において異なる図形と比較すること,つまり,長方形を定義した後に,正方形以外の長方形をひし形や長方形以外の細長い平行四辺形と比較する活動を行うことで,長方形の角が直角であることに気づくようにすることである。第二に,着目すべき構成要素の関係に基づいて,道具を適切に用いて,図形を作図したり確かめたりすること,つまり,紙を折って長方形をつくる活動や,三角定規を用いて長方形をかいたり,直角であることを確認したりする活動を行い,長方形の4つの角が直角であるという関係を理解できるようにすることである。後者については角が直角であることを自覚できるように,白紙に長方形をかく課題を設定したが,実際にはそれらの活動を,言語で述べることまでは扱われなかった。この授業の前後で38名の児童に対して,質問紙調査を行い,その結果を分析したことから,この授業を受けることにより,児童の理解の状態が有意に向上あるいは保持したと判断することができた。特に,ひし形や長方形以外の平行四辺形の図と正方形以外の長方形の図を同じグループにせず,平行四辺形と長方形の相違性を捉えることができるようになり,さらに,直角に着目して長方形を捉えることができるようになった。
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