2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680208
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
川床 靖子 大東文化大学, 文学部, 教授 (90119412)
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Keywords | 科学実践 / フィールドワーク / 科学者の「語り」 / 個人の腕の可視化 / 実験室コミュニティ / 社会-道具的組織化 / バイオテクノロジー実験 / 高エネルギー物理学実験 |
Research Abstract |
科学者の実験室での実践をフィールドワークして明らかになったことは次の3点である.一つは,科学者の「語り」は彼らの科学的実践やそのコミュニティを組織化するための不可欠なリソースであるということ,二つ目は,実験室における"個人"或いは"集団"の組織化のあり方は対象,道具,テクノロジーの配置と密接に関連しているということ,三つ目は,実験室コミュニティを組織し維持する実践は,対象,道具,テクノロジーをある形で配置し維持する実践と相互構成的なのだということである. 例えば,DNA実験を行っている研究者たちは,彼ら同士で対象であるDNAがどのようなものかを可視化したり,装置やその設定方法について議論するとき,非常にしばしば実験者の腕やテクニックについて言及する.バイオテクノロジー実験室では「腕について語ること」が研究の対象や装置を可視化するための不可欠なリソースとして用いられている.これは,DNAという研究対象や道具,装置,テクノロジーが個人によって実験が遂行されるように配置されていることと密接に関連している.バイテク実験室の「個人による実験」は数百人規模で行われる高エネルギー物理学における実験とは対照的である.高エネルギー物理学実験では,あたかも「知識を有する個人」がこの巨大な集団性の中に消えてしまうかのようである.文字通り,「知識を有する個人」が高エネルギー物理学の実践のなかで消え去るわけではないが,加速器による実験を解釈する際に実験者個人の腕に言及されるということはあり得ない.科学者の実践をフィールドワークすることによって明らかになったポイントの一つは,バイオテクノロジー研究における「個人の腕の可視化」も高エネルギー物理学研究において「知識を有する個人が不可視になること」も共に社会一道具的に組織化されているということである.
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