2002 Fiscal Year Annual Research Report
小学校教育における多文化教育カリキュラム―総合学習を核としたカリキュラムの開発と試行―
Project/Area Number |
13680291
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
桂 直美 三重大学, 教育学部, 助教授 (50225603)
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Keywords | 多文化教育 / 総合学習 / 国際理解教育 / 人権教育 |
Research Abstract |
「総合的な学習の時間」において取り組まれる「国際理解教育」のカリキュラムを、多文化共生の理念、および「総合学習」における「学び」の深化の点から検討した。国際理解教育と人権教育を領域として区分してきた結果、前者の矮小化、後者の空洞化が起こっている。またカリキュラムが予定された知識の獲得として構想される時、あるいは「総合的な学習の時間」に導入された国際理解教育のイベント性を背景とする時、ゲスト講師から「当事者」の「物語り」を聞くという形式の授業がその個人の疎外に帰結するという問題を内包していることが指摘される。この問題に対し、「対等な他者」、「かけがえのない個人」として向かいあい対話することを可能にする、関係性の構築の様相を明確にすることが、中心的な課題となった。 小学校において一連の多文化教育の授業を計画し、教師とともにアクションリサーチを行った。6学年では、ゲスト講師を招く従来の形式においても、異なる文化的背景を持つ他者との対等な出会いを保障する可能性に焦点をあて、ゲスト講師と音楽演奏表現を通して関わることを軸としてカリキュラムを展開した。授業についての教師の語りを分析し、かけがえのない個人として出会うことが、子ども自身の生活レベルで自身の問題に目を向けることを促すこと、その総合学習に特徴的な学びは自己の再構成として捉えられること、またカリキュラムの展開とパラレルに教師自身の成長過程があることが認められた。2学年では、関係性の構築を目的として時間的厚みをもって構成されたカリキュラムにおいて、「学び」は個々の子どもとゲスト講師双方における「自己の再構築」として捉えられた。 また学校レベルのカリキュラム改変について、および「この地域」の特定の現状をカリキュラム開発の始点とする必要から、三重県における多文化共生教育の課題について検討した。
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