Research Abstract |
「図形感覚の認識に関する教授学的研究」では,図形感覚の認識が図形指導にどのように関与するのか,図形感覚を育成するにはどのような指導が考えられるかといった,図形感覚の認識に関する教授学的研究を行った。図形感覚の育成において,心の働きに直接関与しているイメージの働きをいかに活性化するかが問題となる。また図形感覚の育成のためには図形感覚を用いる志向的な経験を促す必要がある。本研究では,図形感覚の諸機能を育成するために,しきつめ,図と地の問題,正方形合成問題,タングラム問題,図形板問題などの教材を開発し,具体的な展開例も示した。 「確かな図形認識を育てる図形指導」では,まず,心理学的認識論,数学的認識論,数学教育的認識論の3つの枠組みをもつ認識論的研究を提唱した。また表記論的研究と現象学的研究により指導原理を探究した。表記論的研究では,言語的表現,図的表現,現実的表現の意味や役割を理解する必要性を説いた。そして現象学的研究では,図形認識過程の研究と図形感覚の研究による知見を示し,図形認識の本質を解明した。さらに直観と論理の融合を図ること,および小・中学校の図形指導の特質を踏まえて連続性を追究することで,確かな図形認識を育てる図形指導を構想した。 「直観的側面に着目した『図形』指導」では,図形概念の形成過程に関する認識論的研究,図の認識に関する表記隔的研究,および図形感覚の認識に関する現象学的研究等により得られた知見を通して,中学校図形指導のあり方について示唆を与えた。まず中学校の図形指導の特質を明らかにした後,図形認識の直観的要素が論理的思考を推進するという観点から,直観と論理の融合に関する提言を行った。そして中学校の図形指導を改善するために,3つの直観的側面(視覚化能力,図形感覚,創造性と空間観念)に着目して,図形カリキュラムを再考することを提案した。
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