2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13680402
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
西野 哲朗 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (10198484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富田 悦次 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (40016598)
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Keywords | 量子コンピュータ / 量子計算 / アナログ量子計算 / NP完全問題 / グラフの3彩色問題 / 断熱量子計算 / アナログ計算 / 計算機シミュレーション |
Research Abstract |
計算という概念の定式化から生まれたTuring機械は,その後の産業にコンピュータという形で大きな波及効果を及ぼしてきた.しかし,原理的に計算可能であっても,現実的時間内には計算困難である問題も多数存在する.その1つが因数分解である.現在,広く用いられているRSA公開鍵暗号は,その因数分解の計算困難性が安全生の拠り所となっている.しかし,この安全性の根拠が.量子コンピュータが将来実現されれば.脅かされる可能性が出てきたのである. このような経緯もあり,近年,量子コンピュータが一般にも大変注目されるようになった.それは,現在のコンピュータを本質的に越える計算能力を持ったコンピュータの開発への期待があるからである.しかし,一方で現在のコンピュータの高機能化にも目覚ましいものがあり,計算困難な問題に対しても種々のアルゴリズムが提案されている. そのような状況の中で,近未来に実現可能な量子コンピュータ像を描くことは,非常に困難なものとなっている.その理由は,おおむね以下の3点である.(1)現在の計算効率を本質的に上回る量子アルゴリズムの数が少ない,(2)その物理的実現が非常に困難である,(3)たいていの計算は現在の計算機で事足りてしまう. 上記のような量子コンピュータの研究状況の中で,MITのE.Farhiらによって発表された断熱量子計算は,断熱的に初期ハミルトニアンから最終ハミルトニアンへと時間発展ハミルトニアンを変化させて,問題の最適解を求める手法として提案された.この手法は物理的実現可能性と汎用性が高い量子計算モデルとして現在注目されている. そこで本研究では.NP完全問題の1つであるグラフの3彩色問題を解く量子アナログ計算モデルを提案し,そのモデルを物理的に実現可能とするには,問題を最大次数4の平面グラフの3彩色問題に変更すれば良いことを示した.さらに,提案モデルに対して,断熱量子計算の条件を満す時間発展ハミルトニアンを構成し,計算機シミュレーションによって,その有効性を検証した.
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 西野哲朗: "量子計算量理論"電子情報通信学会論文誌D-I. Vol.J84-D-I, No.1. 3-17 (2001)
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[Publications] Junnosuke Moriya, Tetsuro Nishino: "Relationships between the Computational Capabilities of Simple Recurrent Networks and Finite Automata"IEICE Transactions on Fundamentals. Vol.E84-A, No.5. 1184-1194 (2001)
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[Publications] Tetsuro Nishino: "Mathematical Models of Quantum Computation"New Generation Computing. Vol.20. 317-337 (2002)
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[Publications] 西野哲朗: "効率的量子アルゴリズムの設計手法"情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用. Vol.43, No.SIG7(TOM6). 1-9 (2002)
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[Publications] 渥美賢嗣, 西野哲朗: "NMR量子計算によるNP完全問題と因数分解の解法"情報処理学会論文誌:数理モデル化と応用. Vol.43, No.SIG7(TOM6). 10-18 (2002)
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[Publications] Kazuo OHTA, Tetsuro NISHINO, Seiya OKUBO, Noboru KUNIHIRO: "A Quantum Algorithm using NMR Computers to Break Secret-Key Cryptosystems"New Generation Computing. Vol.21. 347-361 (2003)
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[Publications] 西野哲朗: "量子コンピュータの理論"培風館. 245 (2002)