Research Abstract |
本年度は最終年度であり,分布の裾の漸近特性を調べるための基礎的な理論研究を進め,その結果を各種の待ち行列やネットワークへ応用した.以下の研究成果は,1が基礎研究であり,2から4は応用的研究である. 1.ウイナー・ホップ分解の一般化:これまでの研究により,待ち行列モデルの定常分布の裾の漸近特性を調べる上で,マルコフ加法過程を用いたモデル化と同過程に関するウイナーホップ分解が有効であることがわかった.しかし,既存のウイナー・ホップ分解は,多次元の場合に制限がある.そこで,この制限を取り除く形でウイナーホップ分解を拡張した. 2.バッファー容量制限の効果:待ち行列ネットワークにおいて,一部のノードの待合室を制限した場合に,他のノードがどのような影響を受けるかを,待ち人数分布の裾の減少率により調べた.ボトルネックとなるノードを制限すると大きな影響があることがわかった.また,ボトルネックの厳密な条件を明らかにした. 3.待ち行列選択の効果:複数の待ち行列があるとき,客が最短の待ち行列を選ぶモデルは待ち行列の中でも基本的なモデルであるが,解析的には困難な問題である.このため,到着がポアソン過程であり,サービス時間が指数分布に従う場合を除いて,研究が十分に進んでいない.そこで,マルコフ加法過程による方法を適用して,到着が再生過程である場合に,最短の待ち行列の定常分布の裾の減少率を求めた. 4.有限待合室モデルの損失率:待ち行列が1つのモデルで,待合室が制限されたときの客の損失確率は解析的に難しい問題の1つである.特に,サービス窓口が複数の場合には,簡単な場合を除いて,直感的な近似の他には,これまでほとんど研究がない.この問題に対しても,マルコフ加法過程による方法を適用し,一般的な複数窓口モデルに対して,損失率の漸近的な特性を解明することができた.
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