Research Abstract |
昨年度開発した亜硝酸測定装置はフローインジェクションによる分析で,5分に1回の測定を行い,14pptの亜硝酸濃度を測定できる方法であった。今年度は,まず,この装置を用いて実大気の亜硝酸濃度が正確に測定できるかどうかのチェックを行った。方法としては,管状デニューダー法との比較およびDOAS(differential optical absorption spectroscopy)との比較を行った。管状デニューダーは3時間平均値,DOASは数百メートルの距離の平均値であるが,いずれも比較的良い一致を示すことがわかり,正確に亜硝酸を測定できることがわかった。また,亜硝酸は,NO_2濃度の変化とよく似ていることがわかった。早朝の日の出後のピークと日中に濃度ゼロにならないことは,今年度も確認できた。発生源特定のために,上記の方法を用いて,土壌からの発生,自動車からの直接排出を測定しているが,どちらからも亜硝政が検出された。時間や場所によって寄与が違うのではないかという推測はできたが,それ以上明らかにはできなかった。また,上述の方法はフローインジェクション方式であるため,さらに時間分解能の向上を目指して,連続分析法の開発もおこなった。液流速と気体流速の条件等を定め,ほぼ連続で測定できるところまで開発することができた。連続測定によりさらに詳細なデータが得られ,また信頼性も再評価できるため,連続測定法を完全に確立した上で,亜硝酸の発生源の解明を行うことができるものと期待される。凝縮相の亜硝酸の分解は,液滴の乾燥過程による亜硝酸の挙動の研究を行った。その結果,液滴中に含まれるカルシウムイオンが,粒子として残る亜硝酸と気体として揮発する亜硝酸の割合に影響を与えていることがわかった。つまり,揮発性の酸性成分は,不揮発性のカチオンとアニオンの濃度に基本的に依存するが,カルシウムイオンが存在すると,より揮発しやすくなることがわかった。しかし,実試料を乾燥させると,より揮発しにくくなる場合も観測された。この理由についてはさらなる研究が必要である。
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