2001 Fiscal Year Annual Research Report
慢性砒素中毒によるNO産生に係る因子の変動とそれに起因する血管調節系の撹乱
Project/Area Number |
13680620
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
下条 信弘 筑波大学, 社会医学系, 教授 (00080622)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 嘉人 筑波大学, 社会医学系, 助教授 (00250100)
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 予防医学, 助教授 (90081661)
|
Keywords | 砒素 / NO / 血管調節 |
Research Abstract |
砒素は自然界に広範に存在し、地下水汚染等による中毒を引き起こしている。中国では200万人が曝露されており、そのうち数万人の砒素患者が発生している。地域性砒素中毒の事例として、循環器疾患、末梢血管障害等の症状が知られている。当研究グループは中国内モンゴル自治区の慢性ヒ素汚染地域で行ったフィールド調査を行った結果、井戸水のヒ素の主要成分は5価の無機ヒ素であり、この長期曝露により血管調節に重要な役割を演じている一酸化窒素(NO)の血清中濃度が対照群と比較して約半分まで低下していることを明らかにしている。そこで本研究では、ヒトとヒ素代謝様式が酷似しているウサギをヒトの代替として用い、5価無機ヒ素の慢性飲水による生体内NO産生に係わるマーカーの変動を調べた。その結果、内モンゴルのヒ素汚染地域の井戸水濃度に近い5ppmの5価無機ヒ素を18週間(ヒトに換算して約5年に相当)飲水しても、体重増加や飲水量は対照群と殆ど変化が見られなかった。しかし、砒素曝露後18週目における血漿中NO代謝物量は、曝露群が対照群の76.3%(P<0.05)まで低下した。一方、尿中過酸化水素量は、曝露群が対照群の1.2倍(P<0.05)高い値を示した。心臓中アルギニン量については両群共に差は見られず、モノメチルおよびジメチル代謝物の産生は殆ど観察されなかった。肝臓中BH4濃度は砒素曝露は対照群の62.4%(P<0.01)まで減少した。 以上より、5価の無機砒素をウサギに慢性飲水させるとヒトの場合と同様に生体内NO産生量の低下が見られることが明らかとなった。
|