2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜二重層(内層・外層)リン脂質組成を制御調節する分子群の構造と機能の解明
Project/Area Number |
13680687
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
武谷 浩之 産業医科大学, 医学部, 講師 (60222105)
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Keywords | 細胞膜 / リン脂質 / 血小板 / ホスファチジルセリン / アポトーシス / 癌 |
Research Abstract |
通常、ホスファチジルセリン(PS)は、アミノリン脂質局在化酵素の作用により細胞膜リン脂質二重層の内層に多く存在するが、アポトーシス細胞ではリン脂質の局在化を阻止する撹乱(スクランブル化)酵素:Scramblase (Scr1)の活性化によりPSはリン脂質二重層の外層にも転送され、これがシグナルとなり、PS受容体を有するマクロファージ等がアポトーシス細胞を貧食すると考えられている。申請者は昨年度、Scr1cDNAをクローニングし、その構造・機能相関を遺伝子工学的手法により解析した。その過程で、Scr1にはスプライスアイソフォームが存在しており、Scr1の機能制御因子として働く可能性を示唆した。これらのアイソフォームは正常初代細胞には発現しておらず、癌化した細胞株にのみ発現しており、Scr1機能の抑制の癌特異形質への関与が示唆された。 本年度は、癌細胞へScr1遺伝子を導入させることで癌細胞表面にPSを多量に露呈させ、貧食細胞による癌細胞のクリアランス能を高めて制癌を目指す新規な遺伝子治療法の開発研究を行った。その結果、ヌードマウス皮下への移殖実験において、Scr1遺伝子を導入した腫瘍の成長が、ベクターのみを導入したコントロール群に比べ、著しく抑制されることを見出した。他方、in vitroの解析では、Scr1遺伝子の導入による癌細胞の形態や増殖性、PSの細胞表面への露出率に有意な変化は観察されなかった。したがって、Scr1遺伝子を導入した癌細胞は、移殖された後にマウス宿主側の環境と相互作用することで、その形質が変化し増殖が停止したものと考えられた。
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Research Products
(1 results)